2021.04.08
学生を、社会起業家に!with 立命館

#04 SSAP受賞チームインタビュー「林業の課題解決をテーマに、社会起業を」

Sony Startup Acceleration Program(以下SSAP)は2019年9月より学校法人立命館(以下、立命館)が設立した「立命館・社会起業家支援プラットフォームRIMIX(Ritsumeikan Impact-Makers Inter X(cross))」と連携し、学生・生徒・児童のアイデアのブラッシュアップ、事業化への課題検証等を支援しています。2019年度は、総長ピッチチャレンジ(※)に参加する学生に向けてSSAPがアイデアを形にするための支援を行い、2020年度も継続してワークショップやトレーニング、コーチング等を行っています。

※立命館の学生・生徒・児童のプロジェクトをビジネスレベルまでブラッシュアップし、総長へピッチを行うコンテスト。

今回は、最終成果発表として行われたピッチイベント「総長PITCH THE FINAL 2020」にてSSAP賞を受賞した、立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部4回生の内山浩輝さんにインタビューしました。内山さんはピッチイベントにて、チーム「konoki」のリーダーとして「日本の林業問題をお茶で解決する」プランを発表しました。2021年4月に株式会社konokiを設立し、現在は取締役社長として活動しています。

社会にグッドインパクトを与える「社会起業家」になりたい。

――プログラムに応募したきっかけは?

もともと私は起業をしたいと思っており、ずっと自分に合った事業ドメインを模索して色々な場で活動していました。例えば学内の実践型課外プログラム「APU起業部」への参加、ベンチャーキャピタルでのインターン、株式会社タイミー福岡支社の立ち上げ等。これらを通じて、「社会起業家」として、社会にとって価値があると自分が思えるものを死ぬまで創り続けていきたいと考えるようになりました。
そして、konokiを事業拡大するために、まずは立命館の学生としてSSAPで実績を作りたいと思いました。また私自身立命館のことが大好きなので、立命館を代表する社会起業家になる第一歩にしたかったからです。

――社会起業家になるための第一歩として、プログラムに参加したのですね。チームはどのように組みましたか。

我々のチームは現在5人で活動を行っています。そのうちの1人、三重県美杉町の3代目林業家・三浦妃己郎さんは、APU起業部でお世話になった出口学長の繋がりがきっかけで出会いました。三浦さんに林業のお話を伺う中で、解決すべき課題が山積している現状や、一方でまだまだたくさんの魅力が眠っている林業の面白さにだんだんのめり込んでいきました。
また事業を進める過程で出会ったメンバーがおり、現在は彼も共同代表として一緒に事業を行っています。

内山さん、林業家・三浦妃己郎さん、共同代表 陣脇康平さん
写真左から内山さん、林業家・三浦妃己郎さん、共同代表 陣脇康平さん

とある林業家との出会いが構想のきっかけに。絶望的な林業の現状を打開したい。

――ピッチイベントでは「お茶で解決する日本の林業問題」をテーマにピッチをされていましたが、このテーマはどのように決めましたか。

私が林業の課題解決を志すのは、林業変革の必要性を痛感しているのと、林業に関わりがなかった私たちが新たな視点を持ってこの課題に取り組むことに価値を感じているからです。
森林は土砂災害防止や水資源貯蓄、二酸化炭素吸収といった多面的機能を有しており、これは貨幣価値に換算すると年間70兆円にのぼると言われています。つまりこの70兆円の行く末を握っているのは、今後の林業なのです。しかし日本の林業の現状は絶望的だと言われています。国土の7割を森林が占める世界有数の森林大国であるものの、国内で供給されている木材の8割は安い輸入材に頼っているいびつな現状(※1)。これにより国産木材の価格は暴落。林業は全く儲からなくなりました。儲からないので林業家は激減、山は管理されず、荒廃しています(※2)。しかも現状では、解決しようと思っても従来のやり方に囚われてなかなか上手くいかないという課題があります。この課題に対して、これまで林業に関わりのなかった私たちだからこその新しい発想で生み出せる価値があると考えています。

※1 農林水産省「木材需要報告書」「木材価格」より引用
※2 林野庁「森林・森林白書」より引用
konoki製品に使われる杉の木
konoki製品に使われる杉の木

――プログラムではSSAPのメンバーからどのようなトレーニングやメンタリングを受けましたか?

まだまだ事業構想が浅い中、客観的に構想を見てアドバイスをくださったり、質問をいただきながら議論を重ねたりして、プランを整理していただきました。常に相談できる事業経験者がいることは何より心強かったです。また何度もメンタリングを受けたことが、自分自身の起業家としての内省に繋がりました。

――プランのブラッシュアップと共に、起業家としてのマインドにも良い影響があったのですね。プログラムの半年間で苦労したことは?

継続的に「林業にインパクトを与え続けること」と「事業の収益性を高めること」の両軸のバランスを保ちながら、いかに実現可能性が伴った構想を描けるかに苦労しました。正直、今もまだ模索していますが、半年間のプログラムを通して着実に解像度を高めることができました。

2021年4月より木製品数種類を一般販売予定
2021年4月より木製品数種類を一般販売予定

林業の市場を、これからの10年でかつての1兆円市場に戻すことを目指して。

――プログラムに参加して得た一番の学びは何でしょう?

SSAPの宮崎さん等からのメンタリングでの学びはもちろん、ピッチしたことによって広がった仲間の輪はとても大きな財産になりました。総長ピッチで初めて僕の活動を知ってくれた友人が「めっちゃ共感した、応援してる!」とわざわざ連絡してくれたり、後に実施したクラウドファンディングに寄付してくれたりと、多くの人の思いを乗せた事業に変わっていったことを実感しました。
また、プログラムに参加した他のチームの存在が「もっと早く事業を成長させたい」と良い意味で焦りを感じさせてくれ、彼らとはライバルでありつつ仲間でもある関係性を作れたことも財産になりました。

総長PITCH THE FINAL 2020でのピッチの様子
総長PITCH THE FINAL 2020でのピッチの様子

――現在のチームでの活動内容、今後の展望は?

今の林業は様々な課題が絡み合っており、その解決は一筋縄ではいきません。だからこそ、実現したい大きなビジョンを描きながら、足元では確かな実績を積み重ねて、林業界に大きなうねりを起こしたいと思います。
まずは、川下での新たな木の需要創出に取り組みながら、林業および我々の事業「konoki」の認知の向上を目指します。その上で、木の消費および流通を一気に促進させる仕組みづくりに挑戦したいです。林業産出額5,000億円のうち木材生産が2,648億円と小さな市場(※3)ですが、10年でかつての1兆円市場に戻すことを目標に掲げ、「日本といえば林業」な21世紀を創りたいと思います。

※3 農林水産省「令和元年林業産出額」より引用

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、760件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年10月末時点)

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