2023.02.27
SOMPOグループが挑むメガトレンドの事業化 ―アクセラレーションプログラム始動―

#02 「この仕組みで大丈夫か?」疑念を解決した方法論とは

2022年よりSOMPOリスクマネジメント株式会社(以下、SOMPOリスク)と損害保険ジャパン株式会社(以下、損保ジャパン)とが開始した、アクセラレーションプログラム「SOMPO Acceleration Program」

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)はSOMPO Acceleration Programの開始にあたりSOMPOリスクに、プログラムの制度構築や運用の支援に加え、プログラムへの応募促進施策やビジネスモデル構築トレーニングを提供しています。

SOMPOリスクがアクセラレーションプログラムを開催することにしたワケは?スタートアップ企業と共に創出を目指す、メガトレンド領域の新規事業とは?プログラムに参加したSOMPOリスク社員に起こった変化とは?SOMPOリスク史上初の取り組みの軌跡をご紹介します。

SOMPOリスクマネジメント株式会社 事業開発部 オープンイノベーショングループ 武田 有人(たけだ・ゆうと)さん
SSAP 組織開発・アイディエーション企画担当アクセラレーター 塩川 雄太(しおかわ・ゆうた)

「コンペの仕組みを改善したい」という想いから生まれたプログラム

――武田さんのアクセラレーションプログラム「SOMPO Acceleration Program」推進における役割を教えてください。

武田さん:SOMPOリスクの事業開発部に所属し、SOMPO Acceleration Programをメインに担当しています。プログラム全体の企画と事務局を担っています。前職はコンサルティングファームでITシステムの開発・統合プロジェクトに従事していましたが、事業開発の領域に携わりたいという思いから転職しました。現在は事業開発推進の他にも、IT関連の支援プロジェクトにも従事しています。

――武田さんは、SOMPO Acceleration Programの発案者でもあると伺いました!

武田さん:はい、これまでも社内からアイデアを募る形でビジネスコンペを行っていたのですが「コンペの仕組みを改善したい」という想いで、このプログラムの企画を発案しました。

プログラムの推進にあたって、制度設計や進め方の決定、イベント(応募者やカタリスト向けの説明会、応募された事業アイデアの審査など)の企画に加え、スタートアップ企業や社内の関係者とのコミュニケーションなど多くの業務に携わっています。

5人のメンバーがテーブルの上にノートパソコンを広げて、笑顔で話し合っている写真
SOMPO Acceleration Program 事務局メンバーの打ち合わせの様子 
※感染症対策を行った上で撮影を行っています。

――プログラムの実施にあたっての塩川さんの役割を教えてください。

塩川:主担当のアクセラレーターとして、プログラムの制度設計のコンサルテーションや運営支援を行っています。具体的には、Stage Gate System導入における論点やベストプラクティスの提供、カタリスト向けの応募促進イベントやトレーニングの企画・提供をしています。

またスタートアップ企業からの事業アイデアの募集期間中には、有望な企業への声がけ、応募を検討している企業に向けての説明会開催、個別相談への対応など、募集状況を見ながらさまざまなテコ入れ施策をご提案しました。

社内での検討の過程で生じた、ある疑問

――SOMPO Acceleration Programは「社内のコンペの仕組みを改善したい」という観点で生まれた取り組みとのこと、従来のコンペにどのような課題を感じていたのですか?

武田さん: 従来のコンペは前述の通り社内からアイデアを募る形で運営しており、集まったアイデアをもとに新たなビジネス創出を目指したことは何度かありました。しかし単なる既存ビジネスの焼き直しになってしまうことや、企画しただけで実現に至らなかった取り組みも多く、コンペの仕組み自体が形骸化しているように感じていたのです。

そこで私は「仕組み自体を実効性のあるものに変え、実際に新しいビジネスを創出できるようにしたい」と考え、新たな方法を模索し始めました。

――なるほど、より確実にビジネス創出に繋がる仕組みの構築を目指されたのですね。どのように検討を進めましたか?

武田さん:手段を検討するべく、他社の事例も含めて情報を集めました。その過程で、いくつかの気付きがありました。まず、実際に新規事業を生み出している企業は、社内からアイデアを募るだけではなく社外との協業、いわゆるオープンイノベーションを推進していることが多いということ。また、社外との連携を進める1つの手段として「アクセラレーションプログラム」という仕組みの存在を知り、その検討も始めました。

しかし大枠は理解することが出来ても、具体的な制度を考えようとするとネット上に出ている情報だけではどうしても細部が煮詰まらない。また「素人の自分が考えたこの仕組みで本当に大丈夫か?」という疑問も出てきます。そこで、オープンイノベーション推進の実績があり、アクセラレーションプログラムの制度設計を支援してくれる存在が欲しいなと考えるようになりました。

インタビューに答える武田さんの写真
SOMPOリスクマネジメント株式会社 武田 有人さん

――最初は自社で情報収集や検討を進められたとのこと、SSAPを選ばれた理由があればぜひ教えてください!

武田さん:実は他の企業にも何社か相談に乗っていただいていたのですが、SSAPに決めた理由は大きく2つあります。

1つは、SSAPもSOMPOリスクも大手企業グループに所属しており、そのような企業グループの中で新規事業を生み出す経験やノウハウが豊富である点を魅力的に感じたためです。SOMPOリスクでプログラムを実施する際には知名度の高い損保ジャパンとの共催が良いだろうと考えていましたが、2社間での調整や事業案の出口をどうするかが課題になることも予想していました。ただ、そのような課題の解決策はネットには転がっていません。そのため、生の経験がある方々から直接支援をいただきたいと考えました。

もう1つは提供いただけるリソースの豊富さです。各種資料のフォーマットやプログラムの制度設計も体系的に整理されていたので、初めてプロジェクトを進める我々としては安心感がありました。

Stage Gate System導入と、経験豊富な第三者のお墨付きが自信となる

――「アクセラレーションプログラムの制度設計」を求めてらっしゃったSOMPOリスクさんに対して、どのようなソリューションを提供しましたか?

塩川:SOMPO Acceleration Programの制度設計のために、事業アイデアや技術開発テーマを効率的に発掘・育成していく方法論「Stage Gate System」を導入しました。

Stage Gate Systemとは、事業創出までのフェーズを4つの“Stage”に分解し、Stageごとに評価の“Gate”を設けた仕組みです。Stage1はアイデアをゼロから生み出すためのステージで、Stage2はビジネスモデルの蓋然性を高めるための仮説構築、Stage3は検証を行い、Stage4にて事業ローンチに向けた準備を行います。そして、各Gateにて筋の良いものだけを次のステージに進めるためのスクリーニングを行います。Gateは後半にいくほど通過の判断基準を高く設定します。

Stage Gate Systemの流れのイメージ図 Ideation、ビジネスモデル仮設構築、ビジネスモデル仮説検証、事前準備、の順でステージアップしていく

SOMPOリスクさんのプログラムの場合は、“Stage1”でスタートアップ企業がSOMPOリスク又は損保ジャパンとの協業ビジネス案をプログラムにエントリーし、“Gate1”である書類審査を実施。それを通過したスタートアップ企業が“Stage2”に進み、設定された期間内でビジネスモデル仮説を構築し、“Gate2”に挑む設計にしています。

インタビューに答える塩川の写真
SSAP 塩川 雄太

――SSAPの支援によって、何か変化はございましたか?

武田さん:全体を通じて、制度設計や進め方について「経験あるアクセラレーターから第三者的な目線でお墨付きをもらえる」という点で非常に助かりました。

記憶に強く残っているのは、例えば「スタートアップ企業へのインセンティブをどうするか」という論点を提示してくださったこと。我々はビジネスコンペのインセンティブと言えば、賞金や出資を考えていました。しかしお二人からそれ以外の選択肢、例えばSOMPOリスクの顧客の紹介、SOMPOグループならではのデータ提供などはどうか?と提示していただけたのです。そのおかげでスタートアップ企業に対して幅広いインセンティブを提示することができましたし、応募数の増加にも繋がったと思います。

――スタートアップ企業へのインセンティブの検討段階の議論が印象的だったのですね。塩川さんが支援の過程で工夫したポイントは?

塩川:武田さんがおっしゃった通り、SSAPとしてはSOMPO Acceleration Programを、「SOMPOならではの独自性を出したプログラム」にしたいと考えていました。これは、昨今スタートアップ企業を対象にしたコンテストが数多く開催されていて、その中で差別化を図る必要があることが背景です。

一方で、プログラムの設計や準備にかけられる時間や人員は限られていました。そのため、メリハリをつけてスピーディにプログラムを推進すべく「時間をかけて議論すべきポイント」と「ツールやテンプレートを活用し効率的に進めるべきポイント」を見極めて検討しました。

例えば、重要なポイントである募集テーマやスタートアップ側のインセンティブ設計は時間をかけて慎重に検討。逆にツールやテンプレートを活用できる分野、例えば事業アイデアの募集や審査においてはスピーディに進めるべく、事務局運営業務を効率化するWebアプリ「StartDash Office」を導入。また応募要項などのドキュメント類は、SSAPが持っているものをテンプレート化してご提供しました。

1つでも多くの応募アイデアが事業化に辿り着くように

――「SartDash Office」の導入などがプログラム推進の効率化に繋がったのですね!StartDash Officeとはどのようなツールですか?

塩川:StartDash Office は、新規事業アイデアを募集・審査する際の事務局運営業務を効率化するWebアプリです。アイデア募集ツールの準備や審査時のデータやり取りなど、プログラム運営における事務局の手間やコストを削減可能です。

ノートパソコンの画面にStartdashのアプリ画面が表示されているイメージ写真
StartDash Officeのイメージ

SOMPO Acceleration Programではランディングページ作成、応募フォームの作成、応募アイデアの管理・審査にStartDash Officeをご利用いただきました。

StartDash Officeを活用したプログラムの募集ページ
StartDash Officeを活用したプログラムの募集ページ

――StartDash Officeを活用されてみていかがでしたか?率直な感想を教えてください!

武田さん:そうですね。そもそも当初はスタートアップを募集する仕組みをどうしようか、申し込み用のWebサイトや応募フォームをゼロから作成しようかなどと考えていました。そのため、StartDash Officeではプログラムに必要な機能が揃っており、非常に助かりました。

参加登録の応募フォーム 応募者情報の入力項目には、必須マークやプルダウンで選択できる仕様になっている
StartDash Officeの応募フォーム(例)

また事業アイデアの審査が、Webの管理画面上で行えるのも便利でした。従来は表計算ソフトで審査用の評価シートを自作しており、審査を担当する社内の関係者から見づらく採点しにくいなどの不満が上がっていました。しかしStartDash Officeを使えば、システムに登録された審査員が、各々の画面で評価できます。集計結果もシステムで一目瞭然で、余計な作業が発生せず助かりました。

審査結果管理画面 各審査員からの5段階評価や、評価に関する説明コメントなども書いてある
StartDash Officeの審査結果管理画面(例)

――最後に、今後のSOMPO Acceleration Programの展開にかける想いを教えてください!

武田さん:まずは応募いただいた事業アイデアから、ローンチに辿り着く事業を確実に創出できればと思います。このプログラムは新しい事業を創るための取り組みですが、同時に新規事業を生み出すサイクル構築の役割も大きいです。そのためには、まず今年のプログラムで結果を出すことが何より重要です。

将来的にはこのプログラムをきっかけに新規事業を作り出そうとしたり、面白そうなことに挑戦したりする雰囲気が社内外に広がっていくことを期待しています。

塩川:SOMPOグループのような大企業と革新的なビジネスアイデアを持つスタートアップ企業の協創により、社会貢献に繋がる新たなアイデアが生み出されること、そしてそのアイデアが1つでも多く事業化に至ることを期待しています。

また、こうした取り組みを通じてSOMPOグループ内に新規事業のカルチャーやマインドセットが浸透していくことはもちろん、SOMPOグループ外にも刺激を与え、より多くの企業がオープンイノベーションに取り組んでいくきっかけになると嬉しく思います!

インタビューに答えてくれた塩川と武田さんが笑顔で並んでいる写真
左:SSAP 塩川 雄太、右:SOMPOリスクマネジメント株式会社 武田 有人さん

連載「SOMPOグループが挑むメガトレンドの事業化 ―アクセラレーションプログラム始動―」では、今後もSOMPOリスクによるアクセラレーションプログラムの軌跡をご紹介してまいりますので、お楽しみに!

※本記事の内容は2023年2月時点のものです。

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