2022年よりSOMPOリスクマネジメント株式会社(以下、SOMPOリスク)と損害保険ジャパン株式会社(以下、損保ジャパン)とが開始した、アクセラレーションプログラム「SOMPO Acceleration Program」。
Sony Startup Acceleration Program(SSAP)はSOMPO Acceleration Programの開始にあたりSOMPOリスクに、プログラムの制度構築や運用の支援に加え、プログラムへの応募促進施策やビジネスモデル構築トレーニングを提供しています。
SOMPOリスクがアクセラレーションプログラムを開催することにしたワケは?スタートアップ企業と共に創出を目指す、メガトレンド領域の新規事業とは?プログラムに参加したSOMPOリスク社員に起こった変化とは?SOMPOリスク史上初の取り組みの軌跡をご紹介します。
新規事業創出を「自分事」にしてもらうための仕掛けとは?
――犬飼さんのアクセラレーションプログラム「SOMPO Acceleration Program」推進における役割を教えてください。
犬飼さん:私はSOMPO Acceleration Programの事務局として、主にスタートアップとのコミュニケーションや、広報関連業務などを行っています。
前職はメーカーで品質管理業務などに携わっており、SOMPOリスクに入社後は火災保険に関するリスク評価支援、企業のBCM(事業継続マネジメント)コンサルティング支援に加え、新サービス・新規事業開発に関わる多種多様な領域に携わっています。
――今回、SOMPO Acceleration Programでは「カタリスト制度」を導入されたと伺いました。まず、この制度の概要を教えてください!
犬飼さん: SOMPO Acceleration Programで導入したカタリスト制度は、SOMPOリスクと損保ジャパンの社員がスタートアップ企業に伴走する形で、事業アイデアをブラッシュアップするものです。伴走する社員をカタリストと呼び、自らの意思で立候補してもらう形で、社内で募集しました。カタリストとは触媒を意味し、社外のパートナーと協力しながら新規事業を創出し推進していく役割です。
――スタートアップ企業に伴走する方々をカタリストと呼ぶのですね。この制度を導入することにした背景は?
犬飼さん:前回のインタビューでご紹介した通り、SOMPOリスクでは新規事業創出を目的に、昨年度までは社内からアイデアを募集する形でビジネスコンペを行っていました。しかし従来の形では課題が多々あったため、今回から新たにスタートアップ企業との共創によるプログラムを開始することにしました。
ここで、ある疑念が沸々と湧いてきました。それは、プログラムに参加したスタートアップ企業のアイデアが事業化に至ったとしても、SOMPOリスク社内の多くの人たちからは「また事業開発部が何かやっているんだろうな」という他人事で終わってしまうのではないか?ということ。SOMPOリスク全体で新規事業創出を自分事に捉えてもらいたいという想いがあったので、その状態を回避する案を考えました。
そこで辿り着いたのが「カタリスト制度」でした。1次審査を通過したスタートアップ企業に対し、カタリストが伴走します。
この制度によって、スタートアップ企業にSOMPOグループのアセットを一部提供しつつ、SOMPOならではの事業案を構築することができます。またカタリストとしてプログラムに参加する社員も新規事業開発のマインドを学ぶことができます。カタリスト制度はSOMPOリスク発の新規事業創出に、継続的に社員を巻き込むために必要不可欠な手法であると判断し、導入することにしました。
カタリストに応募したワケ
――溝田さんは、SOMPO Acceleration Programに「カタリスト」として参加されたと伺いました。ご所属と普段の業務内容を簡単に教えてください。
溝田さん:私はSOMPOリスクのサステナビリティ部 環境エネルギーグループに所属しており、普段は主に GHG(温室効果ガス)算定支援、省エネ診断、排出量検証など民間企業や自治体が排出するGHGCO2の算定や削減に関する業務に従事しています。
――溝田さんがカタリストに応募された理由は?
溝田さん:私は、以前から「環境エネルギーグループが持つ技術力やノウハウを活かし、SOMPOリスクで新しい事業を展開したい」と考えていました。そのためプログラムでのカタリストの募集案内を見た時に、「会社の取り組みなら自分1人で構想するよりも効率的に事業化ができるので、これに乗らない手はない!」と思い、ほぼ反射的に応募しました(笑)。スタートアップ企業との共創によってメガトレンド領域で事業創出を目指すプログラムは、まさに私が求めていたものでした。
マインドセット育成のためのイベントと、スキル習得のための研修プログラム
――プログラムでカタリスト制度を取り入れるにあたり、SSAPでもサポートを行ったとのことですが、具体的に何を実施しましたか?
塩川:カタリストの募集期間中に応募検討層の方々を対象に行った施策と、カタリストに選ばれた方々を対象に行った施策があります。
まず募集期間中には、応募検討層の方々に向けて、新規事業創出・推進に必要なマインドセット育成のための施策として、2つのイベントを開催しました。
1つ目が、スタートアップ立ち上げ経験者であるSSAP卒業生による講演会です。ソニー内で新規事業を立ち上げた社内起業家が経験談を共有しました。事業育成で得られる個人の成長とチームの進化を理解し、カタリスト候補者の方々の「新規事業に挑戦したい」「事業化を成功させたい」というモチベーションを喚起し起業家マインドを醸成することを狙いました。
2つ目は、有識者によるマインドセット育成ワークショップです。カタリストへの応募を検討している参加者同士のグループワークなどにより自分の価値観や関心を探求し、将来成し遂げたい目標を明確化しました。普段の業務とはまた違ったさまざまな価値観に触れることで良質な刺激を得てもらい、新規事業が生まれやすい土台作りを行いました。
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――応募検討層に向けたイベントを開催したのですね。実際にカタリストに選ばれた方々には、何を実施したのですか?
塩川:新規事業創出に必要なスキルを習得いただくため、研修を提供しました。カタリストはそれぞれスタートアップ企業の事業アイデアを担当し、伴走しつつ事業アイデアをブラッシュアップしていくことになります。その際に、スタートアップ企業と事業構想についてスムーズにディスカッションするために、アイデアを原石の状態から事業計画にまで磨き上げるスキルが必須と考えたためです。カタリストの方々が実践型の研修プログラムで知識・スキルを体系的に学びつつ、担当する事業アイデアをブラッシュアップできるようにサポートしました。
――イベントや研修をサポートする上で、工夫した点はありますか?
塩川:カタリストの方々を対象にした研修は、通常業務との調整をしやすくすべく、カリキュラムをアレンジして提供しました。研修の拘束時間の長さがネックとなって講座に参加できない方が出ないよう、座学のパートは事前にビデオでご視聴いただき、講義当日は質疑とワークに絞って実施するというスタイルにしました。
講義では、個々が担当するスタートアップ企業の事業案に対して、SOMPOグループとしてどのようなアセットを提供できるか、共創ビジネスとしての提供価値をどのように最大化するかなど、重要なポイントを追求いただくようにレクチャーさせていただきました。
――今回のプログラムに最適化したサポートを行ったのですね。マインドセット育成ワークショップや新事業開発の研修など、SSAPの支援で役立った点はございますか?
犬飼さん:事務局の視点では、SSAPにサポートいただいた講演会やワークショップ、研修プログラムはSOMPOリスク全体で「新規事業創出が何たるか」を改めて学ぶ良い機会になったと思っています。今までは、薄ぼんやりとした知識で新規事業創出に挑んでいましたが、マインドやフレームワークを学び、ここまでやらなければいけないんだ、やり抜くことが必要なんだということを学べました。
溝田さん:カタリストとして参加した研修で最も驚き、また一番の学びとなったのは「新規事業創出において最も重要なのは、目標(夢)に対するビジョンである」ということです。新規事業はまだ世の中に無い価値を創造するものだからこそ、事業の原点となるビジョンの定義が大切だということでした。新規事業に取り組む上では、目に見える利益率などが起点になるものだと考えていたので、SSAPの方々からインプットいただいた考え方は、率直に目から鱗でした。
社内に「新規事業創出に前向きなマインド」を浸透させたい
――溝田さんはカタリストとしてプログラムに参加し、学びになったことや普段の業務に活きたことなど、影響はありましたか?
溝田さん:プログラムを通して、新しい事業を考案する際に注意すべき点を学びました。中でも重要なポイントだと感じたのが「その事業を渇望する顧客がいるか」 について考えるということです。実際に、サステナビリティ部 環境エネルギーグループでの私の普段の業務に当てはめて考えたところ、「現在は顧客が多いが、5年後に同じだけの需要があるか?」という疑問が生じます。そこで初めて「現在の私の業務の安定はむしろ不安要素であるかもしれず、次の事業展開を考える必要がある」ということに気付きました。
また現在、サステナビリティ部内でも新規事業を考えており、その過程でもプログラムから学んだことが活かされています。
――カタリスト制度によって、会社や社員に何か変化はありましたか?
犬飼さん:カタリストの募集開始前は「そもそも社員はカタリストに興味を示してくれるか?応募してくれるのだろうか?」と不安がありました。出社する度、会う人に「カタリストになりませんか?」「カタリスト面白いですよ!」としつこいくらいに勧誘していたほどです(笑)。ただ、いざ募集を開始してみるとたくさんの方に応募をいただき、結果的に今回はカタリストになることを諦めていただいた方もいらっしゃるほどでした。
応募者の方々に話を聞くと「新規事業に携わってみたいと思っていた」「会社として取り組まなければならない領域だと思っていた」などの意見がありました。社内に新規事業に取り組みたい人はたくさんいたけど、その方々の想いが見えていなかっただけなのだと気付きました。このように「カタリスト制度」を導入したことによる一番の変化は、新規事業創出に対する社員一人一人の想いを可視化できたことだと思っています。
――最後に、今後のSOMPO Acceleration Programの展開にかける想いを教えてください!
犬飼さん:まずはプログラムに応募されたアイデアから新しいビジネスが1件でも多く形になっていくことを期待しています。またそれ以上に、プログラムを通して新規事業創出に対する前向きなマインドが社内に広がっていくことを目指しています。
ソニーは創業時から新しい事業を生み続け、エンタメ、金融など新たな領域を開拓していっているかと思います。私たちSOMPOグループも同様に、今あるビジネスだけに満足するだけでなく進化させること、時には飛び地のような分野にも挑戦し新しいビジネスを生み出していくことが必要だと考えています。プログラムがそのきっかけの1つとなると思います。
溝田さん:プログラムを通じて、スタートアップ企業とSOMPOリスクという2つの企業で新規事業創出に取り組むのは、いわゆる「言うは易く行うは難し」の取り組みであると感じました。新規事業創出はシーソーゲームのようなもので、両社の目的や考え方、熱量のバランスが取れていなければ軌道に乗りません。そのため、プログラムを成功させるためには「利益を生み出す」という目標だけでなく両社の立場はイーブンであること、加えて共通の目的を可視化しお互いが理解していることが重要だと思います。
またプログラムで新規事業に携わる中で、私たちは「新規事業を成功させるポイント」を学ぶことになります。これらを、SOMPOリスク社内の既存事業に持ち帰り、社内の従来の仕組みなどの改善にも活用できると思っています。
塩川:プログラムへの参加を通じて、カタリストの皆さまは新規事業の楽しさ、難しさ、何より失敗を恐れずチャレンジすることの大切さを学んでいただけたと思います。この経験を現業に還元していただくのをもちろん、次は自らアイデアを起案して新規事業に挑戦してみていただきたいですし、それをプログラムが後押しできる仕組みが出来れば良いと思っています。
また仲間が活躍する姿を見て刺激を受けた同僚の方々が「次は自分も!」と思ってくださるような、新規事業に挑戦する風土が組織全体に波及していくことを期待しています。
※本記事の内容は2023年3月時点のものです。
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