2023.02.06
SOMPOグループが挑むメガトレンドの事業化 ―アクセラレーションプログラム始動―

#01 リスクマネジメントの専門家がアクセラレーションプログラムを始めたワケ

2022年よりSOMPOリスクマネジメント株式会社(以下、SOMPOリスク)と損害保険ジャパン株式会社(以下、損保ジャパン)とが開始した、アクセラレーションプログラム「SOMPO Acceleration Program」

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)はSOMPO Acceleration Programの開始にあたりSOMPOリスクに、プログラムの制度構築や運用の支援に加え、プログラムへの応募促進施策やビジネスモデル構築トレーニングを提供しています。

SOMPOリスクがアクセラレーションプログラムを開催することにしたワケは?スタートアップ企業と共に創出を目指す、メガトレンド領域の新規事業とは?プログラムに参加したSOMPOリスク社員に起こった変化とは?SOMPOリスク史上初の取り組みの軌跡をご紹介します。

SOMPOリスクマネジメント株式会社 事業開発部長 末岡 正嗣(すえおか・まさつぐ)さん
SSAP組織開発・アイディエーション企画担当アクセラレーター・責任者  宮崎 雅(みやざき・まさし)

メガトレンド領域の事業創出、成功のための“初”の試みとは?

――末岡さんのご所属と、アクセラレーションプログラム「SOMPO Acceleration Program」推進における役割を教えてください。

末岡さん:SOMPOホールディングスの中に、SOMPOリスクマネジメント株式会社というコンサルティング会社があるのですが、私はその中で事業開発部の部長を担っています。また、2022年度より開始したSOMPO Acceleration Programの事務局責任者としてプログラムを推進しています。

私たちSOMPOリスクでは、カーボンニュートラルなど将来的に成長していくであろう市場を「メガトレンドテーマ」として掲げ、テーマに関するリサーチを行ったり他企業との共創で新規事業創出を検討したりしています。

このような紹介をすると聞こえは良いかもしれませんが、自分は「出る杭は打たれる」の「杭」だと認識しています。リスクマネジメントのコンサルタントとして長年生きてきたのですが、とにかく新しいものが好きで、人がやっていないことに挑戦したい。日本の保守的な風土を持つ会社では煙たがられることが多かったと思います(笑)。

――プログラムの実施にあたって、SSAPはどのような体制で支援しましたか?

宮崎:SSAPはプログラムの制度構築や運用の支援に加え、プログラムへの応募促進施策やビジネスモデル構築トレーニングを提供しています。支援のメイン担当はSSAPのアクセラレーターである塩川で、私は組織開発領域の責任者として支援に関する監督者のような役割を担っています。

――改めて、「SOMPO Acceleration Program」はどのような取り組みですか?

末岡さん:SOMPO Acceleration Programは、スタートアップ企業と協力し成長分野における新たなサービス・事業のスピーディな開発を目的としています。スタートアップ企業の事業化成長なども行うアクセラレーションプログラムです。主にレイターステージのスタートアップ企業を対象としています。

2022年8月~9月で企画アイデアを募集し、10月に1次審査、2月に2次審査を実施。2023年の秋頃に最終審査を予定しています。多くのスタートアップ企業の方々にご応募いただきましたが、2次審査では2件程度に絞り込む予定です。

プログラムの流れ
プログラムの流れ

このプログラムを実施する目的は、前述のメガトレンドテーマにおいてスタートアップ企業のアイデア力・技術力をお借りし、新規事業を効率的に創り出すこと。現在定めているメガトレンドテーマは、カーボンニュートラル、再生エネルギー、サプライチェーン、物流DX、モビリティ、EC・プラットフォーマーです。

「未来の安心・安全を、あなたと共に」というキャッチコピーと、オフィスビルのイラストがデザインされている
プログラムのキービジュアル

保険・リスクマネジメントが、新技術・製品の強みとなる理由

――SOMPO Acceleration Programの実施に至った背景は?

末岡さん:背景としては大きく2つあり、1つはSOMPOリスクとスタートアップ企業間の「共創」による事業化を実現するため。もう1つはメガトレンド領域の新技術・製品を発展させるためです。

1つ目の「共創」による事業化の実現について、SOMPOリスクではパートナー企業との協業を「共創」と呼んでいます。最近はパートナー企業との協業をいくつも組み合わせて新規事業創出を加速させることが多いです。一方で、NDAを締結し「何か一緒にやろう」と言ったきりで取り組みが自然消滅してしまうなど、事業化まで実現できるケースは少ないとよく聞きます。私自身もこういった状況に直面することがあり焦りを覚えていました。

この状況を打開するため、共創の意義(Why)、何をビジネスとして生み出すのか(What)、どのように稼ぐのか(How)を明確にしつつプログラムを実施できればと思ったのです。

――プログラムの実施に至った背景として、これまで以上に社外との共創を加速し事業化を実現したいという考えがあったのですね。もう1つの背景は?

末岡さん:2つ目は、メガトレンド領域の新技術・製品を発展させること。新しい技術や製品が世の中に普及しづらい背景に、消費者や企業の担当者などのユーザーが新しいものを購入・使用する際に感じる「不安」があると考えています。この不安は言い換えるとリスク。このリスクを払拭するための保険サービスがあれば、ユーザーは新たな技術や製品を導入する勇気を持てるはずです。保険やリスクマネジメントと新たな技術・製品をセットで提供できると、それらの社会実装が加速されると考えました。この構造が実現できれば、それはスタートアップ企業にとっても私たちにとってもwin-winです。

これらを実現するためには「スタートアップ企業と行うアクセラレーションプログラムしかない!」と閃き、SOMPO Acceleration Programの開催に至りました。

インタビューに答える末岡さんの写真
SOMPOリスクマネジメント株式会社 末岡 正嗣さん 
※感染症対策を行った上で撮影を行っています。

――プログラムを通じてどのようなことを実現したいとお考えですか?

末岡さん:プログラムの本来の目的である「新規事業の創出」はもちろん実現したいですが、それとは別に、「私が新規事業を創り出し、会社や世界を変えてやるんだ」という情熱を持った仲間を社内に増やしたいと思っています。

そのためにも本プログラムでは、スタートアップ企業に対し事業の具体化を支援する伴走者として「カタリスト」という役割を用意しました。カタリストは、SOMPOリスクの社員に自らの意思で立候補してもらう形で募集。彼らは新規事業開発の手順やフレームワークを学びながらスタートアップ企業と一緒に事業を創り上げていきます。カタリストの募集開始当初は応募者が2~3人だったらどうしようかと心配していましたが、実際には想像以上に手が挙がり、心の底から嬉しかったですね。

こういった取り組みによって、所属部門や役職などは全く関係なく、“新事業トモ”(新規事業の仲間の輪)ができていくと考えています。

ソニー・SSAPの情熱と苦労と実体験を学びたかった

――SSAPの支援を導入された背景を教えてください。

末岡さん:アクセラレーターを生業とする会社はいくつかあると思いますが「SSAP、ソニーの実体験を学びたかった」というのが本心です。

ウォークマンど真ん中世代の私としては、ソニーは音楽業界の中心にいた存在でした。ただ世の中のトレンドや環境は大きく変化を遂げ、ソニーも苦しんだ時代があったものと思われます。それでも新規事業の開発に幾度もチャレンジし、今では世界から注目されるさまざまな製品・サービスの開発にも携わっている。10年程前は、このような事業展開は誰も想像していなかったのではないでしょうか。

事業開発のプロセスなどは、教科書的な書籍を読めば理論上は理解できるでしょう。しかしそれだけでは物足りなく、ゼロベースで新たなチャレンジをしていった情熱や経験、その中にあった苦労や実体験を学べるということを知り、SSAPとご一緒させていただくことに決めました。

――リアルな体験をベースとしたノウハウやマインドを求めてらっしゃったのですね。宮崎さんは、アクセラレーターとしてどのような支援を行いましたか?

宮崎:SOMPOリスクさんと最初にお話した際に、SOMPO Acceleration Programの構想はある程度固まっていました。まずはプログラムの目的や実施する背景、さらに過去から現在に至るまでの新規事業開発の取り組み状況や課題感についてもしっかりとヒアリングさせていただきました。

その後プログラム設計のアドバイスと、運用面でのサポートを実施。また、SSAPのこれまでの経験を通じた事例紹介やノウハウ提供も行っています。社外との共創プログラムはSOMPOリスクさんとして初の試みということでしたので、注意が必要なポイントをお伝えしつつ、打ち合わせを通じて会話しながら一緒に企画をまとめていくようなスタイルでの支援でした。

オープンラウンジのテーブルに集まり話し合っている写真、ホワイトボードに付箋を貼って説明している人もいる
打ち合わせの様子

――SSAPの支援で役立った点はございますか?

末岡さん:おかげさまで、本プログラムの進捗は計画通りに進んでいます。また、SSAPの支援はカタリストに向けたマインド育成ワークショップや新規事業開発の研修プログラムも充実しており、私たち事務局側としても学びが多い時間でした。

計画通りとは言っても全てが順風満帆ではなく、プログラムに参加するカタリストやスタートアップ企業から、たまに厳しい意見が寄せられてくることもありました。そのような時にも宮崎さんや塩川さんは私たち事務局の一員かのごとくこちらの意見に耳を傾け、時には熱く議論を交わしてくださいました。その甲斐もあり、事務局がお互いを理解しあう良いチームになってきたと感じています。ただ、議論が白熱しすぎてミーティング時間がいつもギリギリになってしまう点は申し訳ないと思っています(笑)。

「新規事業を創り出し、会社や世界を変えてやる」

――支援の過程で工夫したポイント、こだわったポイントは?

宮崎:最近はスタートアップ企業を対象にしたコンテストは数多く開催されています。スタートアップ企業にとっては多数の中から応募するコンテストを選べる状況にあるため、いわゆる紋切型の内容では応募してくれないのが現状です。そのため、SOMPOリスクさんならではの独自性を打ち出す必要がありました。SOMPO Acceleration Programで創出できる事業テーマは何なのかを明確にし、スタートアップ企業側のインセンティブの設計も実施。またプロモーションの面では、SSAPの協力がある点も訴求ポイントとして押し出しました。募集期間にはSSAPがお付き合いのあるスタートアップ企業の方々にも声掛けを行いました。

また、どんなに良いスタートアップ企業が応募してきても、SOMPOリスクさん側の協業体制が整っていなければ途中で頓挫してしまうかもしれません。このため事業開発プロセスの設計を整えると共に、カタリストの方々には事業開発の知識と実践的スキルが習得できるトレーニングを提供しました。

私たちが支援で大切にしているのは「お客様の納得感」です。こちらの押し付けではなく、SOMPOリスクさんが自信を持ち主体的にプログラムを推進できるよう、疑問点や不安を解消していただきながら進めました。その中でプログラムの企画・運営に関するノウハウもご提供できたと思います。

――最後に、今後のSOMPO Acceleration Programの展開にかける想いを教えてください!

宮崎:SOMPOリスクさんは新たな分野への進出を目指し、その手段の1つとしてプログラムを実施されています。そのため、プログラムを通じて社会に新たな「安心・安全」を提供する事業の創出につながっていくことを期待しています。

「SOMPO Acceleration Programがあったから、この製品・サービスが生まれた」と振り返るようなときが来ると良いなと思っています。

末岡さん:目先の展開としては、このプログラムを通じて多くの方々に「それを待っていました!」と言ってもらえるような新規事業を創り上げたいです。
また、このプログラムに協力してくれたスタートアップ企業やカタリストの方々には、この取り組みを楽しんでもらいたいです。特にカタリストには、事業開発のプロセスやフレームワークを習得しつつ、情熱や仲間など今後に役立つものをそれぞれ得てもらえると嬉しいです。そして「新規事業を創り出し、会社や世界を変えてやる」という気概を持った仲間が会社に溢れている状態を目指しています。

もう少し視野を広げると、このプログラムを通じて、SOMPOリスクがメガトレンド領域で「本気で事業開発に取り組んでいる」ことを多くの方に知ってもらいたいですね。そして、社外との連携が加速することで、SOMPOグループが掲げるスローガン「安心・安全・健康のテーマパーク」が起爆剤のようなきっかけとなり、日本経済が再び高度経済成長期のように盛り上がることを夢描いています。

末岡さんと宮崎が肩を組んでいる写真
左:SOMPOリスクマネジメント株式会社 末岡 正嗣さん、右:SSAP 宮崎 雅

連載「SOMPOグループが挑むメガトレンドの事業化 ―アクセラレーションプログラム始動―」では、今後もSOMPOリスクによるアクセラレーションプログラムの軌跡をご紹介してまいりますので、お楽しみに!

※本記事の内容は2023年2月時点のものです。

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Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は、「あらゆる人に起業の機会を。」をコンセプトに、2014年に発足したスタートアップの創出と事業運営を支援するソニーのプログラム。ソニー社内で新規事業プログラムを立ち上げ、ゼロから新規事業を創出した経験とノウハウを活かし、2018年から社外にもサービス提供を開始。経験豊富で幅広いスキルとノウハウをもったアクセラレーターの伴走により660件以上の支援を24業種の企業へ提供。大企業ならではの事情に精通。(※ 2024年3月末時点)

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