Sony Startup Acceleration Program(以下SSAP)では、これまで培ってきた経験やノウハウを、スタートアップの事業化支援サービスとして社外にも提供中です。2019年7月からは株式会社LIXIL(以下LIXIL)にサービス提供を開始し、2020年7月には電動オープナーシステム「DOAC」を発表しました。
どのような経緯でSSAPがLIXILへサービス提供をするに至ったか、またどのようなドラマがあったのか等、本プロジェクトを連載にてご紹介してまいります。
今回は、株式会社LIXIL Housing Technology Japan理事 ビジネスインキュベーションセンター センター長 羽賀 豊さんに、取り組みのきっかけやプロジェクトの概要をインタビューしました。
大企業「LIXIL」での新規ビジネス立ち上げ。
――羽賀さんのLIXILでのご所属と、今回のプロジェクトでのお立場をお教えください。
私はLIXILにて、マド・玄関・エクステリア・内装インテリアなどを総合的に扱う部門「Housing Technology Japan」で、新規ビジネスとデザインを担当しています。この新規ビジネスの部門は2019年4月から新規に本格稼働し、今回発表した電動オープナーシステム「DOAC」が第1弾の商品となります。
――SSAPを活用されるに至ったきっかけは?
前述の部門で新規ビジネスを担当するにあたり、リーンな形で商品と事業を立ち上げられる手法や協業先を探していました。要件としては、できれば実際に新規ビジネス立ち上げ経験があり、かつその経験が豊富な組織と組むこと。加えて、LIXILという大きな企業の中での新規ビジネスとしてフィットするということも重要なポイントでした。
そんな時にソニー内でSSAPが「社内で培ってきた新規事業創出のノウハウ・手法を、社外にもサービスとして提供している」ということを知り、2019年6月頃、担当者に話を聞いてみたのがこのプロジェクト発足のきっかけとなります。実際にSSAPの方に話を聞いてみると、大企業の中で新規ビジネスの実践を通じて鍛えられてきた、ビジネスに対する目の付けどころ・アドバイスなどがとても参考になり、プロジェクトの立ち上げにSSAPを活用することを決めました。
人材育成の観点でも、プロジェクト担当者にとっての新しい機会に。
――プロジェクトではSSAPを活用し、具体的にどのようなことを行ってきましたか?
電動オープナーシステム「DOAC」をテーマに、新規ビジネスに関するレクチャーとワークショップ、プロジェクトの進捗アドバイスをしていただきました。実テーマでワークショップ等を行うことで、プロジェクト担当者本人もより当事者意識を持って取り組めましたし、DOACの企画としての充実度も上がったと感じています。
特に、ビジネスモデルの仮説検証で行った「ユーザーインタビュー」や「ユーザーに対する価値の深掘」の手法などは、担当者も新たな気づきが多くあったようです。DOACのターゲットユーザーとなる方々の話を直接聞くことで、頭の中が整理され、プロジェクト担当者としての感覚が研ぎ澄まされていったように思います。
担当者はプロジェクトを進めるにあたり考えきれていなかった部分を見つける度、悩んだり苦労したりしていましたが、プロジェクトが軌道に乗り始めてからは、非常にイキイキとやっていましたね。
普段大きな組織に属しているとビジネス全体を俯瞰して設計する機会はほとんどありません。今回のプロジェクトでは担当者たちが、商品企画だけでなく、事業としてどう発展させていくか等も含めたビジネスモデル全体を考え実行したことは、LIXILとしての人材育成の観点からもとても大切なことだったと考えています。
――プロジェクトを進めていくにあたり、新たな気づきはございましたか?
「ユーザーへのユニークな価値提供」と「事業としての価値」との両立という観点で、多く考えさせられました。良いアイデアでも事業としての意味が無いと継続できませんから。その際にアーリーアダプターとなる層を見つけ、リーンにビジネスを始めるというのは、とても重要な気付きでした。
ソニーの中には優れた考え方やノウハウが沢山あるので、それらを融合させ提供いただき新規ビジネスを生み出すことで、多くの企業を元気にしていってほしいです。
DOACで、「日常を幸せに」。
――電動オープナーシステム「DOAC」にかける想いをお教えください。
LIXILは、「日常を幸せに」という大きなテーマを持っています。今回発表したDOACもそのテーマを実現すべく、いつもの玄関ドアに装置をつける事で自動にドアの開閉を行えるようになる商品です。例えば車椅子ユーザーの方々で、ご自宅で自由に出入りできず苦労されている方にも是非使っていただきたいと思います。これで全てを解決できる訳ではありませんが、車椅子ユーザーの方々がご自宅を自由に出入りでき、より積極的にご活躍されることにお役に立てればと考えています。またみなさまの周りに、この商品があると助かると思われる方がいらっしゃれば、是非ご紹介していただきたいと思います。