Sony Startup Acceleration Program(以下SSAP)では、2019年7月から株式会社LIXIL(以下LIXIL)にサービス提供を開始し、2021年9月にはキャットウォール「猫壁(にゃんぺき)」を発表しました。
今回は、猫壁のプロジェクトリーダー 株式会社LIXIL LIXIL Housing Technology Japan ビジネスインキュベーションセンター プロデューサー 藤原 未帆さんにインタビューしました。猫壁のアイデアが生まれたきっかけは?なぜLIXILで猫壁に取り組むのか?等、プロジェクトの全貌に迫ります。
「必ず買ってくれる方がいる!」、猫ちゃんと飼い主のおうち時間。
――藤原さんのプロジェクトでの役割は?
私は猫壁(にゃんぺき)の商品・ビジネスの開発プロジェクトリーダーを担っています。建材メーカーであるLIXILでは珍しい、BtoCビジネスを切り開くトライアル実践を行なっています。
――2021年9月9日、ついに猫壁が発売されましたね。
猫壁プロジェクトは小さなチームですが、ペット関係の会社様を含めた多くの社内外の方々のご協力をいただき商品の販売・プロモーションを推進してきました。商品企画段階で60件以上のユーザーインタビューを重ねニーズ検証を行い、「この商品なら必ず買ってくれる方がいる!」と確信した上で開発を開始。2020年12月からはクラウドファンディングを行い、多くのお客様にご支援いただきました。その時、嬉しさと同時に商品を認めていただけた安堵感で胸がいっぱいになったことを今でも鮮明に覚えています。
――猫壁は愛猫との暮らしをより豊かにするためのキャットウォールだと伺いました。商品の特徴は?
猫壁は、猫ちゃんにとっても飼い主様にとっても一緒に快適に過ごせる暮らしを提供できるキャットウォールです。マグネットがつく壁パネルを設置いただくことで、これまで充分に活用できてなかった住宅壁面を活用し、ご自宅のリビング空間に猫ちゃんのための空間を創り出せます。マグネットでパーツを簡単に脱着出来るため、従来のキャットウォールでは成しえなかった、「自由なアレンジ」ができます。
飽き性な猫ちゃんもたくさん運動して駆け回りたい猫ちゃんも、存分に遊べる場を作ってあげることができるだけでなく、少し年老いて運動量が落ちてきた猫ちゃんにとっての運動しやすいスペースを作ってあげることができるのも、この商品ならではの魅力です。
お使いいただく飼い主様やそのパートナーである猫ちゃんにとっても、楽しく豊かな暮らしを提供できる商品にしたいという想いを込めて商品をつくりあげてきました。
――ちなみに藤原さんもご自宅で猫を飼っていらっしゃいますか?
実は私は猫ではなく、犬(トイプードル)を飼っています(笑)。ちょうど猫壁のプロジェクトに着手し始めた頃、生まれて3ヶ月のわんこを迎え入れました。ペットとの共生で暮らしがより幸せになることを実感でき、猫壁というテーマへの愛着がより強く持てたと感じています。
「猫壁」を「にゃんぺき」と呼ぶことにした理由。
――猫壁は「にゃんぺき」と読むそうですが、名前の由来は?
LIXILは住宅設備機器のメーカー。住宅の中で「壁」は活用できそうで、なかなかうまく活用できないといった印象を抱かせてしまう空間です。このデッドスペースを、一緒に暮す猫ちゃん専用の居場所に一変させる「猫専用の空間」に蘇らせることができれば、という想いを込めて「猫壁」という文字を前面に出しました。一方で漢字では少し堅苦しくなってしまうため、親しみを持って呼んでいただけるような「にゃんぺき」という響きの良いワードを選びました。
――「猫壁(にゃんぺき)」は親しみのわく呼び方ですよね。商品のアイデアが生まれたきっかけは?
飼い主様から聞いたエピソードから生まれました。猫は飽き性で、一度気に入ったと思ったおもちゃなどでもすぐに飽きてしまうことが多いと言われています。そんな飼い主様たちは「DIYでたくさんの労力をかけて作ったキャットウォークが使われない」とか「使ってもらえないキャットタワーがリビングを占拠してしまっている」といった多くのお悩みを抱えています。
それらを解消するために、「マグネット脱着で思い通りの配置換えができる商品であれば、どんな猫ちゃんの好みにも合わせることができるのでは?」と考えました。これが、猫壁が生まれたきっかけです。また獣医さんの専門的な視点からもアドバイスをいただき、猫の運動不足を解消したり、幅広い年齢の猫が使えたりするように、仕様にこだわりました。猫が喜ぶのはもちろんですが、それだけではなく、飼い主様からもくつろいだ顔が良く見えるようにパーツに穴が開いているのも、猫壁の大事なこだわりポイントのひとつです。
――LIXILで“キャットウォール”に取り組む理由は?
LIXILでは「いつもを、幸せに。」という共通のコンセプトを持っています。猫壁プロジェクトでは、大切な家族の一員である「ペット」との暮らしに着目しました。
ペットと人との暮らしはとても密接です。またコロナ禍で、おうちで過ごす時間をより豊かにしていくことも重要になってきています。おうちで過ごすパートナーとの時間をより豊かに過ごしていただくことができる商品を目指して、猫壁を開発しました。
猫壁ファンのコミュニケーション。無限大の組み合わせを。
――猫壁の一番のこだわりポイントは?
こだわりポイントは何よりも「猫ちゃんが喜ぶ空間を作る」点にこだわったことです。走り回って遊ぶだけでなく、猫壁パーツに入って落ち着いて寝てしまう、くつろぎたくてついそこに入ってしまう、といった空間づくりをしたいと考えて、何度も試作品での検証を繰り返しました。また飼い主様にも喜んでもらえるよう、遊んでいたり寝ていたりする猫の表情が見えるような仕掛けも製品に盛り込んでいます。
優しい肌触りのフェルト生地を使って、大きなラウンドの形状に仕上げた猫壁パーツは、見た目にも優しい印象を与えることができるように、作り上げています。
――SSAPは猫壁の公式Webサイト制作で支援させていただきました。支援はいかがでしたか。
猫壁の公式Webサイト制作では、使ってくださっているお客様同士、加えて私たちプロジェクトメンバーもお客様とのコミュニケーションが図れる場づくりをしたいという想いを持って臨みました。猫壁のサイトを見に来てくださった方がワクワクしてくれて、かつ優しい印象を与えられるサイトにするような工夫をしました。
SSAPの皆様はこれを実現するため、数多くのクリエイティブな提案をしてくださり、丁寧に形にしていただきました。SSAPの木村さん・クリエイティブセンターの北原さんには、心から感謝しています。
――猫壁の今後にかける想いをお聞かせください!
猫壁は、自由自在に無限大の組み合わせができる点が何よりの特徴です。
使っていただく猫ちゃんの好みに合わせて使い方をアレンジしてみて「これが一番のお気に入り!」という使い方を見つけたり、お気に入りを見つけるまでの過程をパートナーである猫ちゃんと楽しみながら使ったりしていただければ、私はとても嬉しいです。
そして、使っていただく中でのご意見やご感想もぜひ、私たちにたくさん教えてください。皆さまの声を次の開発につなげたいと強く思っています!