2020.09.17
SSAP Tips

#04 なぜ今、オープンイノベーションが注目されているのか?

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)では、「あらゆる人に起業の機会を。」というコンセプトのもと、起業を目指す方や新規事業担当者をサポートする情報を定期的にお送りしています。

第4回は、自社だけでなく外部の技術やアイデア、ノウハウなどを取り入れて革新的な新商品や新規サービス、ビジネスモデルなどを開発する「オープンイノベーション」の現状や注目を集めている理由、またSSAPでのオープンイノベーションの事例などをご紹介します。

1. オープンイノベーションとは?

まず、「オープンイノベーション」とはどのようなものか、またその現状はどうなっているのかを見ていきます。

――他社と協力して新規サービスを開発

オープンイノベーションとは、2000年代初頭に、アメリカのハーバードビジネススクールのヘンリー・チェスブロウ博士によって提唱されたイノベーションに関する概念の一つ。自社のみで研究開発を行う「クローズドイノベーション」に対して名付けられたものです。
自社だけでなく企業や大学・研究機関、起業家など外部の技術やアイデア、ノウハウなどを取り入れ、協力して革新的な新商品や新規サービス、ビジネスモデルなどを開発するイノベーションの方法を指します。

――経済産業省が創設した「オープンイノベーション促進税制」

企業の内部留保の活用とベンチャー企業への出資によるオープンイノベーションの促進を目的として、令和2年度税制改正で経済産業省が創設したのが「オープンイノベーション促進税制」です。
令和2年4月1日から令和4年3月31日までの間に、国内の事業会社やCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が、スタートアップ企業とのオープンイノベーションに向け、スタートアップ企業の新規発行株式に一定額(大企業は1億円、中小企業は,1000万円)以上の投資を行い、その株式を期末まで保有した場合、株式の取得価額の25%が所得控除されます。
これにより、大企業によるスタートアップ支援が加速するものと予想されているようです。

――オープンイノベーションの現状

注目が高まりつつあるオープンイノベーションですが、実際に日本でのオープンイノベーションはどのような現状にあるのかを見ていきます。

・海外と比べてまだまだ浸透していない
オープンイノベーションに取り組む企業は徐々に増えてきていますが、海外と比べるとまだ広く浸透しているとは言えないようです。
オープンイノベーション協議会(JOIC)の「オープンイノベーション白書 初版」によれば、「オープンイノベーション活動への取り組みに関する調査」(101社:大企業71社、中小企業31社)の結果、日本企業のオープンイノベーション実施率は47%と半数に達していませんでした。欧米企業(121社)の実施率が78%(オープンイノベーション協議会(JOIC)「オープンイノベーション白書 第2版」より)であることと比べると、大きな開きがあると言われています。

・「何から始めたら良いかわからない」が課題
オープンイノベーションが広く浸透していない理由の一つは、「何から始めたら良いかわからない」という点です。イノベーションが重要な経営課題であると位置づけられているものの、マネジメント層は、具体的な目標(KGI)が不明確だったり、KGIは明確であるもののそれに向けた道筋が不明瞭なため仕組みにできなかったりといった課題が挙げられます。また、現場では、一部の部門や個人任せであったり、組織をまたぐ仕組みはあるもののそれを有効に機能させるための外部機関との連携等が不十分であったりという状態です。
つまりオープンイノベーションに取り組もうとしても、何から始めて、どのように進めるかのノウハウなどが企業全体として十分に理解、共有されていないという課題があるため、なかなか取り組みが進んでいかないようです。

2. オープンイノベーションが注目されている理由

オープンイノベーションが、企業がイノベーションを行う際の有効な手法として注目されているのは主に以下のような理由だと言われています。

――社会のグローバル化、消費者ニーズの多様化

ビジネスの分野に限らず、社会全体はますますグローバル化が進展しています。また、働き方や価値観の変化に伴って、消費者のニーズも一層多様化していくものと考えられます。
従来、日本企業の多くは自社の技術やノウハウだけで対応するクローズドイノベーションを採用し、それが日本経済成長の一つの要因ともされてきました。しかし、経営環境が変化する状況においては、クローズドイノベーションでは限界があると言われています。新たなイノベーションを創出するには、硬直化した企業文化や体制を大きく変革する必要があります。そこで、外部の技術やノウハウを導入するオープンイノベーションが注目されるようになっています。

――大企業のスタートアップ支援が増えている

近年、大企業によるスタートアップ支援の取り組みが増えています。
「オープンイノベーション白書 第2版」によれば、大企業とベンチャー企業の事業提携数は、コンピューター‐ソフトウェア、ビジネスサービス分野などを中心に2016年には2015年の約1.5倍に増加し、大企業によるベンチャー企業のM&A数も年々増加する傾向にあります。
その背景には、自社でのイノベーション創出が難しいという事情もあるようです。自社の努力だけでは新しい分野や新規事業への進出には限界があるため、オープンイノベーションを模索するようになっていると考えられます。

――「SSAP」でできること

オープンイノベーションが注目を集めるなか、「Sony Startup Acceleration Program(SSAP)」でサポートさせていただけることについてご紹介します。

・新規事業をサポートするプログラム
「SSAP」は2014年にスタートしたプログラムで、ソニーが持っている起業のノウハウや開発環境を、新規事業を創りたいと考える全ての人に提供し、新規事業の立ち上げから販売・拡大までを一気通貫でサポートします。
2019年度からはより多くのアイデアや人材が交流し、プログラムを通じて新しいスタイルのオープンイノベーションを実現できるよう、社外にも利用してもらえるプログラムに発展させました。

・大企業・大学・ベンチャー・NPOとも連携
SSAPは、大企業や大学、ベンチャー、NPOとも連携。次項で紹介するように、大学での講座創設や商品の共同開発の事例が登場しています。

3. 「SSAP」のオープンイノベーション事例を紹介

では、SSAPの事業化支援サービスを提供したオープンイノベーションの事例として、京セラ株式会社(京セラ)と東京大学の2つのケースをご紹介します。

――京セラ株式会社・ライオン株式会社が共同開発、SSAPが事業化支援した「Possi(ポッシ)」

SSAPが事業化支援をし、京セラ・ライオンが仕上げ磨き専用ハブラシ「Possi」を共同開発しました。
京セラは、オープンイノベーションによる新規事業の創出を加速するため、SSAPの社外向け案件第1号として、ソニー本社内の社外新規事業プロジェクト専用スペース「Incubation Booth」に入居し、製品開発の取り組みを開始。SSAPを通じて提供する体系的なノウハウや知見をベースに、京セラの高いセラミック技術、ライオンのオーラルケア製品に関するノウハウを融合し、ソニーのクリエイティブセンターによるデザイン協力、オリジナルの楽曲提供などにより、実用性に加えてエンタテインメント性を兼ね備えた製品が誕生しました。詳しい取り組みについては、こちらも御参考ください。

参考:Sony Startup Acceleration Programが事業化支援、京セラ・ライオンが仕上げ磨き専用ハブラシ「Possi」を共同開発(https://sony-startup-acceleration-program.com/article043.html

――東京大学と連携した「産学協創エコシステム」

ソニーと東京大学は、企業と大学・学生が連携し、スタートアップを創出する「産学協創エコシステム」の発展を目指して、2019年度から東京大学大学院の工学系研究科に「社会連携講座」を設置。講座のカリキュラムには、SSAPの事業育成の枠組みが導入されています。
講座では年1回のニーズ検証結果をピッチするイベント「オーディション」を軸に、SSAPのアクセラレーターによる「トレーニング」、「ワークショップ」などが行われ、選考を通過した場合、SSAPで事業化検討の機会が提供されるのです。詳しい取り組みについては、こちらも御参考ください。

参考:ソニーと東京大学が「産学協創エコシステム」の発展に向けた 社会連携講座設置に関する契約を締結(https://sony-startup-acceleration-program.com/article002.html

4. 「SSAP」でより良い社会を作る

「SSAP」は、新規事業の立ち上げから販売・拡大までをサポートするプログラムです。スタートアップから大企業の新規事業まで、クリエイターのみなさまのビジョンを実現し、イノベーションエンジンとして、より良い社会を作ることを目指しています。

一気通貫で支援する仕組みが整っていますので、ぜひSSAPの活用をご検討ください。

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、760件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年10月末時点)

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