2020.06.29
SSAP Tips

#02 ビジネスモデルキャンバスの活用法とは?

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)では、「あらゆる人に起業の機会を。」というコンセプトのもと、起業を目指す方や新規事業担当者をサポートする情報を定期的にお送りしています。

第2回は、新規事業におけるビジネスモデル構築のフレームワークの一つ「ビジネスモデルキャンバス」の構造や活用の仕方について、詳しくご紹介します。
新規事業を立ち上げる際には、事業計画書の作成とともに、利益を生み出すための確固たるビジネスモデルを構築することが欠かせません。その際に役に立つフレームワークの一つが「ビジネスモデルキャンバス」です。

1. ビジネスモデルを描こう

新規事業を立ち上げ、ビジネスとして成功させるためには、「誰にどんな価値を提供するのか」をきちんと設定し、売り上げや利益を生み出す仕組みとなる「ビジネスモデル」を描く必要があります。その手法にはいくつかありますが、非常に有用なツールとして注目されているのが「ビジネスモデルキャンバス」です。

2. ビジネスモデルキャンバスとは?

そもそも、ビジネスモデルキャンバスとはどういったものなのでしょうか?その主な特徴からご紹介します。

――フレームワークの一つ

ビジネスモデルづくりをする際には、そのビジネスの構成要素やコンセプトなどをわかりやすくまとめるためのフレームワークを用いることが多いです。ビジネスモデルキャンバスは、そうしたフレームワークの一種で、ビジネスを9つの要素に分けて分析し、ビジネスモデルを構築していきます。

――ビジネスモデルを可視化する

ビジネスモデルキャンバスの大きな特徴の一つは、ビジネスモデルを可視化できるということです。図示することによって、全体像を俯瞰したり、各項目の関連性を確認したりすることができます。

――効率よく作業を進められる

ビジネスモデルキャンバスでビジネスモデルを可視化すると、十分に検討できていない項目がクリアになります。そのため、ポイントを絞って効率よくコア作業に集中することができます。

3. ビジネスモデルキャンバスの項目が意味する事

ビジネスモデルキャンパス

次に、「ビジネスモデルキャンバス」の9項目が意味するところを見ていきます。なお、ビジネスモデルキャンバスは、9項目を以下の順番で設定していくと、最適なビジネスモデルを導き出すことができます。顧客、提供価値が明確になれば、チャネル、顧客との関係、パートナーなども明確になります。最後に全体を俯瞰して「コスト構造」を考えます。

――顧客セグメント(CS:Customer Segments)

まず、「価値を提供する顧客は誰なのか」を明確にします。顧客の属性や利用目的などで顧客をセグメント化することで、ビジネスモデルの核、事業の方向性が決まります。

――顧客価値(VP:Value Propositions)

顧客に対してどういった価値(商品やサービス)を提供し、どういった悩みや課題を解決するのかを設定し、事業の存在価値を定めます。顧客のセグメントが複数ある場合は、それぞれに対する提案価値を考えて記載します。

――チャネル(CH:Channels)

ターゲットとなる顧客層に、どのようなチャネルを通じて価値を届けるかを設定します。チャネルには、販売経路のほかプロモーションやアフターサービスの経路も含まれます。チャネルには、認知→評価→購入→提供→アフターサービスという5つのフェーズがあるので、フェーズごとに考えると整理しやすいです。

――顧客との関係(CR:Customer Relationships)

顧客とどういった関係を築き、それを維持、発展させていくかを設定します。顧客との関係の長さや深さをどう設定するかは収益性にも直結してくるので、ビジネスモデルの強さを決めるうえでカギとなる項目だといえます。

――収益の流れ(RS:Revenue Streams)

商品代金、月額の利用料金、サブスクリプションなど、提供する価値に応じてどのような方法で収益を得るかを設定します。

――リソース(KR:Key Resources)

価値を生み出し、提供するために必要な経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報、ノウハウなど)が何かを設定します。これらの資源の最適な投入量を設定することで、無駄のない、安定したビジネスモデルの構築を目指します。

――重要なアクション(KA:Key Activities)

ビジネスモデルをスムーズに実行し、価値を提供するために必要なメインの活動は何かを明確にします。顧客が求めるクオリティを満たし、不満や問題を解決するプロダクトの制作、マーケティングなど、収益化に欠かせないアクティビティを設定します。

――パートナー(KP:Key Partners)

現在はビジネスが多角化しており、自社完結で顧客を満足させる価値を生み出すのはほぼ難しいといえます。そのため、自社にないリソースを補填し、協業してくれる社外の最適なパートナーを設定します。

――コスト構造(CS:Cost Structure)

価値の提供にかかるコストを明確にします。固定費と変動費に分けて考え、各項目を踏まえた額を算出することが大切です。導き出されたコストによっては、リソースやメインとなる活動を再検討すべき場合もあります。

4. ビジネスモデルキャンバスの実例

では、実際にビジネスモデルキャンバスをどうまとめればよいか、ソニーのハイブリッド型スマートウォッチ「wena wrist」の例をご紹介します。

“Business Model Canvas(Strategyzer.com)” by Strategyzer AG is licensed under CC BY-SA 3.0.

このように、前記9項目を順番に設定していくことで、全体像や項目の関連性を確認しながらビジネスモデルを構築できることがお分かりいただけると思います。

5. ビジネスモデルキャンバスを活用する上での注意点

「ビジネスモデルキャンバス」を上手に活用するためには、押さえておくべき注意点が2つあります。これらを心がけながら、ビジネスモデルキャンバスの完成度を高めましょう。

――アップデートを怠らない

ビジネスモデルキャンバスは、一度作成したら終わりではありません。完成したビジネスモデルはあくまでも仮説ですから、ビジネスをめぐる環境の変化や条件の変化などを踏まえて検証、改善を行って常にアップデートする必要があります。各項目は関連していますから、いずれかの項目に変化が生じると、全体像も大きく変わってきます。

――別で競合調査も進めておく

ビジネスモデルキャンバスは、ビジネス構造を考えるための非常に有用なツールですが、競合調査をする項目が設けられていません。ビジネスモデルキャンバスの作成では、「誰のどのような問題を解決するか?」が重要ですから、競合調査を行うことによって、顧客ニーズをより確実に把握する必要があります。

6.「StartDash」ならビジネスモデルキャンバスが作成可能

新規事業を始める際には、事業計画書の作成、ビジネスモデルの構築などが欠かせません。しかし、これらの作業には手間がかかりますし、どういったポイントを押さえればいいかは分かりにくいものです。

「StartDash」では、新規事業立ち上げの初期フェーズに最低限必要なタスクの確認や管理、投資判断に必要な資料作りが簡単に行えます。新規事業を始めようと考えている方はぜひご活用ください。

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、760件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年10月末時点)

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