Sony Startup Acceleration Program(ソニー・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム、以下“SSAP”)は、2019年7月3日(水)、『Sony Open Innovation Day 2019』を開催しました。イベントでは、SSAPのビジョンやサービスのご紹介から始まり、特別ゲストを交えたクロストークセッション、現在事業化に挑戦している新規案件やクラウドファンディング案件のプレゼンテーションなどをお届けし、懇親会も開催しました。
今回は、「クロストークセッション」をレポートします。
同セッションでは、実際にSSAPを活用し事業化、または事業化に挑戦している方々に、クロストークセッション形式で体験談をお話していただきました。
■クロストークセッション① “SSAPを活用して事業化した「toio™」と「wena wrist」”
(ソニー・インタラクティブエンタテインメント T事業企画室課長 toio開発者 田中 章愛
ソニー株式会社 Startup Acceleration部 wena事業室 統括課長 對馬 哲平)
SSAPで得られた、濃密でスピード感ある日々。
――ひと言で表すと、お二人にとっての“SSAP”とは何ですか?
田中:1日が1年分に感じられるような濃密な経験ができる場所。アイデアを立ち上げる時期は濃密な日々を過ごしました。
對馬:「自由と責任」です。根底に「自由」があり、その上で事業を考えて行動し、結果に対しては自分で「責任」を取る、ということです。
――SSAPで事業化して良かったことは?
田中:私はもともと研究者だったので、事業計画を書いたことはなく、事業化のための専門的な知識もありませんでした。しかしSSAPでは、事業化のプロフェッショナルや法務などの専門のサポートもあり、”事業の輪郭を早く作れたこと”が良かった点ですね。
對馬:自分で考えたアイデアを、自分が事業責任者となり世の中に出すチャンスをもらったことが一番良かったです。SSAPの新規事業アイデアのオーディションに挑戦した当時、自分は新入社員だったのですが、年齢に関係なく、平等にチャンスをもらえました。
常に事業の可能性を信じ、客観視すること。
――今まで困難だったことは、どうやって乗り越えてきましたか?
對馬:苦労したことは会社との距離感です。ソニーで新しい事業をやるとなると、物流拠点などはソニーのアセットを使うのが当たり前だと思っていましたが、それが自分の事業に適しているのか、改めて考えなおすことも重要でした。そのうえで、どこに協力していただくかなどを自由に選択できる点も、SSAPの良いところだと思います。
田中:法務など、専門外の分野を自分でやらなければいけないこと。事業全体の視点を持つこと。この2つが大変でした。それらを乗り越える秘訣は、一つは信じることです。「toio」をいう商品を“楽しい、見たことのない”体験であると、自分で信じられたからこそ乗り越えられました。さらに、對馬さんのように信じて突き進む仲間が隣にいたことも刺激になりました。
――お二人の今後の抱負を、会場の皆さんへお聞かせください。
田中:今後の抱負は、toioが“普通”の商品になることです。「PlayStation」といえば皆さんが分かるのと同じように、「toio」もそうなりたいです。会場の皆さんへは、「思い立ったらすぐに行動する、手を動かす」ということを伝えたいです。私も今後も変わらず、日々挑戦していきたいと思います。
對馬:私は、ほとんどの行動にはデメリットはないと思います。いろいろな理由をつけて行動できない人が多いと思いますが、まず行動してみてほしいです。wenaの事業を立ち上げスタート地点に立てたので、今後はもっと大きくしていきたいと思いますし、wenaを世界中の皆さんに使ってほしいと思います。
■クロストークセッション② “京セラ株式会社、株式会社FROGSから見たSSAP”
(京セラ株式会社 研究開発本部 フューチャーデザインラボ所長 横山 敦さん
株式会社FROGS 代表取締役/CEO 山崎 暁さん
ソニー Startup Acceleration部門 副部門長 小田島 伸至)
アイデアを事業に変えられる、”SSAP”という仕組み。
――ひと言で表すと、お二人にとっての“SSAP”とは何ですか?
横山さん:「化学の実験工場」です。単なる足し算、掛け算ではなく、異文化がぶつかって出来る化学反応だと思っています。化学反応によって、ひとつのアイデアがどんどん光輝き変化し、全く新しいものが生み出されていくからです。さらに、その過程で仲間も増えていきました。今回SSAPを通して開発した新商品「Possi」も非常に魅力的なものになったと思います。
山崎さん:「実現する力」です。学生起業家の中で特に多いのは、社会経験やノウハウが少ないがために、失敗してしまう確率が高いことです。SSAPの仕組みのおかげで、学生でもアイデアを事業として具体的な形で実現させ、成功確率を上げることができるようになったと思います。
――自社内ではなくSSAPで事業化をされた背景は?
横山さん:京セラの中でも、オープンイノベーションへの取り組みなど新規事業への試みを行っておりますが、BtoCの領域についてはまだ十分な経験はありませんした。そういった背景から、ソニーが今まで培ってきたB to Cビジネスへの知見、技術、デザインなどをサポートいただければと思い、SSAPへ協業をお願いしました。
――SSAPに期待されていることは何ですか?
山崎さん:日本全体の若年層のキャリア意識を、SSAPの皆さんと連携して向上させていきたいと考えています。中学生や高校生という年齢の区分で分けて教育を行うのではなく、個人の志に合わせてキャリア教育を行えればと思っています。SSAPでは、それが実現できると思っています。
重要なのは“人”のパッション、伸びしろ。SSAPと共に進化を目指す。
――SSAPの事業化支援サービスを社外へ提供し始めて、気づきなどはありますか?
小田島:やはり人材が重要だと感じています。その人がどのようにアイデアを考え、どのように人に伝え、かつ物事を引っ張っていくパッション(熱量)があるか、という点がポイントです。パッションは育成によって得られるものではないと思います。ですので人材を求める時に、社内だけでなく、社外に目を向けても良いと改めて感じています。皆さんは、良い人材を見つける際にどういった点を見ていますか?
山崎さん:私は“伸びしろ”を見ています。出会ってから、その後会うたびに進化している人、行動を変えられる人には、“伸びしろ”があると思います。
横山さん:私は、センスする力が大事だと思っております。それは、世の中が急速に変わっている現在では特に、その変化を敏感にセンスする力が求められると思います。
――最後にひとことお願いいたします。
横山さん:SSAPのアクセラレーターの皆さんはホスピタリティに溢れ、ネアカでロジカルに物ごとを考えられる素晴らしい集団だと思います。今後も進化し続けるSSAPを利用させていただきたいですし、ぜひこれからも続けていってもらえればと思います。
山崎さん:教育は未来だと思います。未来に投資するという意味で、SSAPにも私たちの活動に協力していただければと嬉しいです。
小田島:私は、これからも我々の活動を広げていきたいと考えています。今日ご参加いただいた皆さまとも、今後も一緒に活動していきたいと思います。今日のテーマはスタートアップとオープンイノベーション。共通するのは“見える化”が難しい点で、心が折れそうな毎日があるはずです。そこの部分を、皆さんの熱量とSSAPの仕組みで乗り越えていきたいと思います。これからもSSAPを、よろしくお願いいたします。