2020.10.15
医療系ベンチャー、乳がん早期発見への挑戦 マイクロソニック株式会社

#02 女性視点から生まれたコンセプトデザイン

Sony Startup Acceleration Program(以下SSAP)では、これまで培ってきた経験やノウハウを、スタートアップの事業化支援サービスとして社外にも提供中です。2019年10月からは、医用超音波に関する研究開発及びコンサルティングを行うマイクロソニック株式会社(以下マイクロソニック)にコンセプトデザインのサービスを提供。2020年7月に自宅で簡単に乳がんチェックが行える MAMMOECHOを発表しました。
MAMMOECHOの構想が生まれた経緯や、SSAPがどのようにサポートさせていただいたか等を、連載にてご紹介してまいります。

今回は、ソニー株式会社 SSAPのプロデューサー 小澤 勇人(写真右)とクリエイティブセンターの小坂 真由(写真左)に、今回支援したコンセプトデザインの内容・エピソードやプロジェクトにかける想いをインタビューしました。

女性にとって魅力的な「コンセプトデザイン」を。

――小澤さんと小坂さんの本プロジェクトでの役割をお教えください。

小澤:私は今回、MAMMOECHOの商品企画やコンセプトデザインのプロデューサーを行いました。デザイン面では、クリエイティブセンターの清水さんと小坂さんと連携させていただきました。

小坂:MAMMOECHOのコンセプトデザインとインダストリアル(ハードウェア)デザインを担当しました。コンセプトデザインでは、マイクロソニック社の技術の詳細や入江さん・近藤さんをはじめとする皆さんの商品開発にかける想いを伺いながら、「商品としてあるべき姿」をまとめました。

MAMMOECHO

――MAMMOECHOの製品発表までの「コンセプトデザイン」は、具体的にどのようなフローで何をサポートしたのでしょうか?

小澤:2019年7月に入江さん・近藤さんと初めてお会いし打ち合わせを行い、実際に支援を開始させていただいたのがその3ヶ月後。まずはコンセプトデザインの支援を開始すべく、クリエイティブセンターのデザインチームと共に、マイクロソニックとしての素晴らしい技術の特徴と、課題感を洗い出しました。

小坂:私が最初にマイクロソニック社のお二人にお会いしたのは2019年10月。MAMMOECHOの構想を伺い、女性として「本当に今すぐあったらいい商品だ」と思いました。私自身も、乳がん検査に対しては基本的に「病院に行かなければいけない」「痛い、恥ずかしい」など良いイメージがありませんでしたが、MAMMOECHOであれば自宅で簡単に検査ができる。これは「特に若い女性にとって魅力的なプロダクトになるのでは」と直感的に感じたのです。
同時に、どのようにして“簡単”でかつ“リラックス”してチェックが出来るデザインにまとめるかが重要なポイントになるなと思いました。

小坂 真由 ソニー株式会社 クリエイティブセンター 
小坂 真由 ソニー株式会社 クリエイティブセンター 

小澤:支援開始直後はコンセプトデザイン支援として、洗い出した技術の特徴と、課題感をもとにMAMMOECHOの顧客像を整理し、その顧客となり得る方々のユースケースを想定しました。具体的には、マイクロソニック社は、「超音波装置の小型化により一人で手軽に使える形を実現できる。」「円形に超音波画像化することにより、部位を特定し易い。」という素晴らしい技術を持っていました。この特徴を活かして、「乳がん検査に行きたくない女性」にどんな形を提供できるのか、いくつかのパターンで仮説を立てながら、試行錯誤が始まりました。最終的な現在のMAMMOECHOの形でいこうと話がまとまったのが、2019年11月頃でした。

小坂: そうでしたね。MAMMOECHOの想定ユースケースや、ビジネスはどのように行っていくのか等、プロジェクト関係者の皆さんと充分に議論しアイデアを都度ビジュアル化する作業も担当しました。アイデアを可視化し確認を行うことで、機能やそのカタチの妥当性の確認や摺合せを、共通認識を持ちながらスピーディーに行えたと思います。
またデザインコンセプトの構築から行い、最終的にMAMMOECHOのカタチと色、素材を考察しハードウェアデザインにまとめる作業も行いました。製品の世界感を伝えるためのネーミングも、実はデザイン考察から生まれたものでした。

等身大の女性視点を細部まで。更なる発展に、パートナーも募集中。

――小澤さんはプロデューサーとして、小坂さんはデザイナーとして、支援する過程でこだわった点はどこですか?

小澤:大きく二つあります。一つ目は、マイクロソニック社が持つ技術を最大限活かし、ユーザーとなり得る方々にも最良の顧客体験を提供すること。マイクロソニック社はエンジニアの人数が少ないため、できることできないことの選別を早い段階で行う必要がありました。それらを整理した上で、最大限良い商品を形にできるよう、プロジェクトを進行していきました。
二つ目は、ソニー側で支援を行うメンバー構成。マイクロソニック社のプロジェクトメンバーは男性のみで、商品のターゲットである女性の目線が欠けていることを気にされていました。そこでソニー側のメンバーに女性である小坂さんにデザイナーとして、「自分で使うならどうか」という等身大の視点を持ってプロジェクトに参画してもらいました。

打ち合わせで議論が行き詰まると、「小坂さんはどう思いますか」という質問が飛び交い、小坂さんのリアルな声を反映しつつそれを随時形にしていけたのは、今回のプロジェクトがスピードアップできた大きな要因です。

小澤勇人 ソニー株式会社 Startup Acceleration部門 Open Innovation & Collaboration部
小澤勇人 ソニー株式会社 Startup Acceleration部門 Open Innovation & Collaboration部

小坂:私はデザイン観点で「自宅で簡単にセルフでチェック操作が出来る」というMAMMOECHOの最大の特徴を表現することを、終始意識しました。
また、「私自身が使用するとしたら、このデザインはアリなのか」、常にこの自問自答を大切にデザインしました。多くの女性にとってMAMMOECHOが心強いサポートになればいいという想いで、複雑な操作を排除し簡単なタップで操作できるようにしたり、機械がもつ怖さを消し去る形状にしたり、正確にセルフチェックができるよう補整シートをデザインしたり等、細部までこだわっています。

MAMMOECHO

――今回のプロジェクトにかける想いをお聞かせください。

小坂:「病院での乳がん検診」は、女性にとって、かなりハードルが高いものです。女性のなかには、婦人科に通うということ自体がハードルになっている方も多いのではないでしょうか?
そんな検診を少しでも気軽にできるようにするため、自宅で安心して検査できる測定スタイルや、異常が見つかった場合にも、すぐに医師に相談ができるシステムを今回新しく提案しました。MAMMOECHOによって、乳がん検診というものがもっと身近なものになり、乳がんの早期発見につながることを願っています。

小澤:MAMMOECHOは、乳がん検診ができる装置を「家で使う」という新しい形の提案です。これを広く実現していくという観点で、関連分野のノウハウを持った企業との協業が必要不可欠だと考えています。今後は、ぜひビジネスパートナーをみつけて、実際に多くの人に使ってもらう商品化に辿り着きたいと考えています。ご興味のある企業の方々がいらっしゃれば、ぜひお問合せください。

MAMMOECHO イメージ

>>MAMMOECHOの詳細はこちらから

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、740件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年9月末時点)

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