あなたのアイデアを最短でビジネスに。
事業化支援Webアプリ「StartDash」は、ソニーが手がけるスタートアップの創出と事業運営を支援するSony Startup Acceleration Program(以下SSAP)が培ってきたノウハウを基に、新規事業を始めるために必要な準備の効率化をサポートします。誰でも無料でお使いいただける本アプリをより幅広い方々にご活用いただけるよう、導入事例を連載にてご紹介します。
連載第1回目となる今回は、Possi開発プロジェクトリーダーである、京セラ株式会社(以下“京セラ”)の稲垣智裕さんにお話を伺いました。SSAPの支援を受けながらPossiを生み出すに至った本プロジェクトにおいて、どんな場面でStartDashが活用されたのでしょうか。大企業内で新規事業創出に取り組む方々、必見です。
――StartDashを初めて使った時の印象を教えてください。
稲垣:最初は、とにかく“考えなければいけないことが膨大”だということを感じました。私はもともとエンジニアなのですが、これまで、例えば営業など他の部署の仕事だと思っていた部分も、何もかも自分たちでやらなければならず、コストとして乗っかってくる。事業を起こすというのはこういうことかと現実を突きつけられましたね。またエンジニアとしてものづくりの経験はそれなりにあったつもりでしたが、そのフェーズですら、量産コストなど見えていなかった細かい部分がクリアになって、いかに自分の視点がミクロだったかと。そういう気づきがとても大きかったと思います。
――これまで意識していなかったコストまで視野が広がったのですね。その点について、もう少し具体的に教えていただけますか?
稲垣:私は転職組で京セラは2社目なのですが、企画から商品を作って量産につなげる部分はそれなりに経験を積み、わかっているつもりです。ところがその先の商品を売るための営業活動は、頭ではわかっていても実感が持てていなかった。実際にお客様にお金を払っていただくには、作ったものを「伝える」ことがとても重要で、そこに実はとてもコストがかかる。商品は作って終わりではなく、その価値をお客様に伝えて実際に買っていただくところまで、両輪できちんと回らないとビジネスとして成り立たない。それが否応なしに可視化されるのが、StartDashを使うメリットだと思います。
――なるほど。エンジニアとしての領域でも、StartDashから得られた学びはあったでしょうか?
稲垣:強制的に客観的な目線を入れられることで、エンジニアのエゴや都合のいい解釈があったことに気づきました。瞬間的にかかるコストだけを見て採算が合うと思っていたことも、長いスパンで考えると実は理想の2倍くらいかかっていた、なんてこともありました。ビジネスとして、これまでより1段高い目線で数値感覚を持てるようになったと思います。
――StartDashは進捗管理と共に、ドキュメントの作成機能があります。実際に出力結果はどこかで活用されましたか?
稲垣:最も活用したのは、数値計画のグラフです。いつ黒字化するかなど、財務周りの計画を管理するのに本当に便利でした。Possiは本体と替えブラシのリカーリングモデルなので、それぞれの価格や数量次第で収益が全く変わってきます。少しの差だと思っていても、数が重なると馬鹿にならない金額になってくる。パラメーターをいじるとそれがすぐに反映されるので、どこを安くするとそのしわ寄せがどこに出るか、またそれでも採算が取れるのかということを逐一確認できました。
――情報が見える化されたのですね。その結果を見ながらチーム内でディスカッションなどはされましたか?
稲垣:はい、特にプロジェクトの初期はたくさんやりました。発足当初は今のPossiのモデルとは全く違うものでしたが、数値計画を見ていくとどうしてもうまくいかないことがわかってきて…。メンバーそれぞれの意見や疑問が出てくる中で、見える化されたデータや数値は、共通言語として議論のベースになりました。そういう意味でStartDashは、議論をまとめていくためのツールとしても機能していたように思います。
――StartDashはどのような人にお勧めできるでしょうか?
稲垣:私のようなエンジニアの人に是非使ってもらいたいですね。私の経験上、どうしてもエンジニアは技術ありきで商品を考えてしまいがちですが、売るところまでを意識して設計できるようになれば、もっと新しいものが生み出せるのではないかと思っています。今回、Possiのプロモーションでポストカードを配ったりもしましたが、営業の人たちの粘り強さには頭が下がりました。もっともっと、“売りやすい商品“を作らないとと思わされたんです。ただものを作るだけではビジネスにはならないということを理解し営業・マーケティングの視点を持つことで、エンジニアはよりよい商品を生み出せる。それを学ぶための要素が、StartDashには詰まっていると思います。
――今後、引き続きStartDashを活用する予定はありますか?
稲垣:はい。今後も、自分が新規案件に着手するときはもちろんですが、周りの人へのアドバイスにも絶対に活用したいと思っています。入力する内容の精度はどうしても経験値になってしまうので、Possiのプロジェクトを経験した後の私であれば、よりリアルな数値をもってアドバイスできるはずです。
まず「知らない」ということに気づかされる、そしてステップを重ねてこれならやってみようと思うことができるのが、StartDashを使う最大の価値ではないでしょうか。StartDashは是非、2回以上使ってもらいたいです。1回目は「知らないこと」の認知、そして2回目以降はより深い視点でビジネスをとらえて踏み込んだ活用ができるようになってくると思います。
また、今回のプロジェクトの振り返りにも使う予定です。実際、最初の3か月の間に、ビジネスモデルキャンバスなどのシートは全く違うものになっていきました。見返してみると初期のものは稚拙で恥ずかしいとすら感じる内容ですが、それだけプロジェクトが成長した証だと思います。
SSAPのStartDash担当者、立花のワンポイントアドバイス
「稲垣さんから2回以上使うことをお勧めいただきました。実践を繰り返すことでStartDashのコンテンツへの理解が深まり、より有効に活用できるということだと思いますが、1回目を手軽にやるお勧めの方法があるのでご紹介します。
それは、既存の商品・サービスや過去自分が関わったプロジェクトについて、今から始めるつもりで入力してみるという方法です。成功事例、失敗事例の両方を入れてみるとよいと思いますが、自分のアイデアを試す前によく知っている実例を入れてみることで、疑似的に新規事業の流れを体験できます。特に失敗した事例が何故失敗したのかを考えながら入力すると、新たな気付きが得られると思います。
是非試してみてください。」
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