2023.03.20
サントリーが切り拓く未来 ー生体データ計測デバイス「XHRO」ー

#02 サントリー初のCES出展、成功の裏話

2022年11月に発表された、サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社(以下、サントリーグローバルイノベーションセンター)が開発中のウェアラブル端末「XHRO(クロ)」(仮称)。XHROは、サントリーグループとして初めて出展した「CES(※1) 2023」で、CESの展示から特に注目すべき製品・サービスを表彰する「CES 2023 Innovation Award」を受賞しました。

XHROの開発にあたり、SSAPはハードウェア・ファームウェアの開発を支援しています。XHROの構想から、どのようなプロトタイプを経て製品発表に至ったのか?XHROが狙うさらなる進化とは?サントリーの新たな挑戦の軌跡と未来に迫ります。

※1 例年1月アメリカのネバダ州ラスベガスにおいて開催される、電子機器を中心とした製品やサービスの展示イベント。「世界最大規模のテクノロジー見本市」とも称される
サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社 特任上席研究員 水谷 治央(みずたに・はるお)さん
SSAP プロトタイピング&マニュファクチャリング担当アクセラレーター 安住 仁史(あずみ・ひとし)

XHROをより気軽に体験いただくためのデモとは?

――CES 2023で、XHROはどのような展示を行いましたか?

水谷さん: XHROはサントリーグローバルイノベーションセンターの製品の1つとしてCES 2023でブースを出展しました。XHROのブースでは、プロトタイプを展示しつつ、親指の脈拍から体年齢を推定するデモを行いました。デモでは来場者にXHROを気軽に体験いただけるよう、工夫を施しました。

XHROのブースの写真
XHROのブースの様子

Innovation Awardを受賞したプロダクト専用の展示スペースがあり、そこでもXHROを展示しました。

展示スペース写真
Innovation Awardを受賞したプロダクトの展示スペース
Innovation Awardを受賞したプロダクトの展示スペース

――デモではXHROを気軽に体験できるようにしたとのこと、具体的にどういった点を工夫したのでしょうか。

水谷さん:まず、デモではデバイスの装着をより手軽にできるようにしました。本来はXHROを耳の裏と首の裏にテープで貼り付ける必要があるのですが、CESの展示ではより多くの方に手軽に体験してもらうべく、XHROを手で握っていただき指をセンサーに当てるだけで体年齢を計測できるようにしました。また、本来のXHROでは長時間の計測を行うことで生体リズムが定量化されますが、デモでは1分間の計測で済むようにしました。

体年齢の推定方法としては、オープンデータとして公開されている1万人程度の脈波データを学習データとし、機械学習アルゴリズムを作成し実装。デモ実施時には、これまでの歩みが自分の年輪として刻まれる「人生の振り子時計」を画面に演出することで、XHROが実現したい世界観を少しでも参加者に伝えられるようにしたつもりです。

ブースにて説明を行う水谷さんの写真
ブースにて説明を行う水谷さん

CES出展を成功させるための、デモ用試作機の開発

――SSAPはCES 2023出展に向けて何を支援しましたか?

安住:商品試作を一部改造する形で、CESでデモが可能な試作機の開発を行いました。水谷さんがおっしゃった通りXHROの機能の一部を体験できる試作機を用意し、体年齢を推定するデモを行えるようにしました。
また私も展示スタッフを兼ねてCESに同行し、サントリーの方々や他のプロジェクト関係者と共に、来場者に対してXHROの説明やデモを行いました。

ブースにて説明を行う安住の写真
ブースにて説明を行う安住

――SSAPの支援で役立った点があれば教えてください。

水谷さん:SSAPにはCES出展直前まで商品試作の改造を行っていただきつつ、CES当日のアピール活動まで含めて一貫してサポートいただきました。デモに必要なソフトウェアの更新は文字通りギリギリまで行われていて、現地に着いてからも安住さんにはファームウェアをアップデートしてもらったりしていました。

デモの実施に向けて、他の会社さんにもアルゴリズムやソフトウェア開発面で協力いただきましたが、皆さんが積極的に連携しCES出展を成功させるべく最大限の取り組みをしてくれたと思っています。

「XHROが欲しい」「いつ上市予定か?」などの声も

――CES出展では、周囲から何か反響はありましたか?

水谷さん:XHROのみならずサントリーのブースで発表した全てのプロダクトが、周囲から大きな反響がありました。サントリーとして初めてCESに出展したことも大きな理由かと思いますが、どのプロダクトも多くの人には斬新に映ったのではないでしょうか。CES
の会場であるアメリカでは、サントリーの名前はウィスキーの会社として認知されていました。そのサントリーがこんな新しい取り組みをしているということが目新しく見えたのかもしれません。

CES展示中は連日多くの方々にブースへお越しいただきましたし、CES終了後も協業の可能性も含めて多方面からお話をいただく機会が増えました。今後は国内のスタートアップとの連携なども含めて、多くの可能性を取り込んで飛躍できればと考えています。

安住:XHROのブースには多くの方にお越しいただき「XHROが欲しい」や「いつ上市予定か?」といった声も沢山ありました。XHROに興味を持ってくださった方の多くはヘルスケア領域の事業に興味関心をお持ちの方で、XHROのコンセプトや、センシングできる情報の豊富さ、デバイスの身に着けやすさを評価いただきました。

従来のヘルスケア用のモニタリングデバイスは、「とれる情報の質」と「身に着けやすさ」がトレードオフになっていることが多いです。XHROはそれを克服しようとしている点が1つの魅力です。

ブースの様子の写真
ブースの様子

――多くの方の関心を集めたXHROの今後が楽しみです!XHROの進化や社会実装に向けて、どのようなことに取り組んでいますか?

水谷さん:今回の展示は初期プロトタイプの完成をアピールできた点でとても有意義な機会でした。一方で、一般的なユーザー視点で考えると、ハードウェアにもう一工夫が必要だと思っています。例えば、日常生活での長時間の計測に耐えられるよう装着の快適性はさらに追及したいです。また「なぜ生体計測デバイスを身に付けるのか」というユーザーに向けたインセンティブ設計をソフトウェアで実装することも試み始めており、ハードウェアの進化とは別の視点で社会実装を行うべく実証実験を進めています。

最終的には、進化したXHROを中心としたインフラが日常生活に溶け込んで、健康的な生活が自然に送れるような仕組みに昇華していけたらいいなと考えています。

安住:現在、SSAPではプロトタイプを活用した実証実験と並行して、よりXHROをブラッシュアップするための開発を支援させていただいています。XHROで計測できるデータをさらに増やしたり、XHROを体に貼り付ける方法をよりストレスフリーにしたりなど、現在の試作機に対する改善を重ねていくイメージです。CESへの出展などを経てさまざまなフィードバックをいただいているので、次のステップに向けてXHROをより進化させたいと思っています。

 

連載「サントリーが切り拓く未来 ~生体データ計測デバイス「XHRO」~」では、今後もサントリーの新たな挑戦の軌跡をご紹介してまいりますので、お楽しみに!

※本記事の内容は2023年3月時点のものです。

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