2021.05.20

医療イノベーションアイデア公募|最優秀賞 受賞者インタビュー|福岡大学病院 吉田先生

ソニーグループ株式会社(以下、ソニー)とエムスリー株式会社(以下、エムスリー)は、COMPASS Projectの一環として、最新モバイルセンサー「amue link」を活用した医療イノベーションアイデア公募を実施し多数の応募をいただきました。

今回は、先日発表されたソニー・エムスリーが提供する最優秀賞・優秀賞のうち、最優秀賞を受賞された福岡大学病院 医療情報部 診療部長・消化器外科 診療教授 吉田陽一郎先生にインタビューしました。

大腸がん治療を専門、医療情報部長も。ソニー製品が好きで、直観で応募。

――先生のご専門領域をお教えください。

専門は大腸がん治療、医療情報で、現在福岡大学病院にて、医療情報部の診療部長と消化器外科の診療教授をしています。

――これまでの略歴をお教えください。

私は産業医科大学医学部を1996年に卒業後、消化器外科医として研鑽を積み、大学院では分子生物学教室で抗癌剤の薬剤耐性について研究していました。2010年から福岡大学消化器外科に勤務しており、大腸がん治療を専門としています。2020年には医療情報部長を拝命し、電子カルテシステム等の運営にも携わっています。福岡大学次世代がん治療研究所では、「がんバイオバンク」を設立し、デジタルPCRや次世代シーケンサーを用いて、ストレス下でのがん遺伝子の変化(がんの進化)についても研究しています。

――アイデア公募に応募されたきっかけは何ですか。

アイデア公募は、たまたま見つけて応募しました。もともとソニーが大好きで、我が家にあるテレビ・サウンドバー・ブルーレイ・デジタル一眼レフカメラ・ワイヤレスイヤホン・パソコン(VAIO)等がソニー製品で、パソコンは5台目です。ソニーのホームページを見ていた時に偶然この公募の告知に出会ってしまい、直観的に「これだっ!」と思い、応募しました。私は割と、直観や偶然を大切にするタイプだと思います。

吉田先生が仕事場のパソコンで作業をしている写真
医療の発展のために自分たちに何ができるのか?見落としていることは無いのか?日々分析しています。

高齢がん患者のための評価法、「amue link」を使って確立を。

――今回応募されたアイデア「高齢がん患者の周術期ダイナミックアセスメント」の概要をお教えください。

私のアイデアは、最新モバイルセンサー「amue link」を用いて高齢がん患者さんの日常生活動作を記録し、手術による合併症や生存期間についてAIを駆使して分析するものです。通常は、心電図や肺機能検査等の生理機能検査と呼ばれる検査をして手術適応を決めますが、日常生活そのもので手術適応を決めようという新たな試みです。また加えて、検査を省略することも可能ではないかと考えています。モバイルセンサーは、徒歩・自転車・バス・車・電車、エレベータ上下、階段上下なども検知可能で、Bluetoothを介して脈拍、血中酸素度等の測定機器と接続することでバイタル測定が可能になります。そのデータをソニーのAIチームと分析して、医療の未来の形を創造したいです。

――高齢がん患者さんの手術適応の判断に、モバイルセンサーで取れるデータを活用するというアイデアなのですね。このアイデアが生まれた背景をお伺いできますか。

高齢がん患者さんの治療は、必ずしも「標準治療」が最善の治療ではなく、「身体的・精神的・社会的評価」と「本人の希望」によって治療法を選択しています。しかし、高齢者機能評価は、医療従事者の時間を必要とする上に主観的な側面も多く、統一された評価法や明確な基準が存在しません。そこで、簡単で客観的で誰がやっても同じ結果にたどり着く評価法が必要だと感じていました。
IoT(Internet of things)化とAI化が進む世の中で、これらを利用すればより良い評価を実現できるのではないか、と考えていたところ、今回の「amue link」を用いたアイデア公募と偶然に出会い、「渡りに船だ」と直観。2021年から高齢者がん診療ガイドライン作成委員をさせていただくことになったことも、視野やチャンスを広げてくれるのではと期待しています。

吉田先生がロビーでインタビューに応じている写真

最新のテクノロジーを使って、医療の未来を創りたい。

――今後の医療分野で成し遂げたいこと等がございましたらお聞かせください。

今後、医療は大きく変革すると思います。多くの分野では既に、機械が仕事をして人間が管理しているように、医療においても電子カルテシステムが診断や治療方針を決定し、医師が承認する時代が来つつあります。さらに、車の運転のようにロボットが自動的に手術をする試みがすすんでいます。AIやIoTを従来の医療に融合させることにより、これまで難しかったことが解決できるようになるケースがたくさんあるはずです。失敗を恐れずに目の前に山積みされた問題を一つずつ解決しようと考えて行動に移すことこそ、最も大切なことだと感じています。ソニー・エムスリー・Mebixのみなさんにサポートしていただき進めていく臨床試験を成功させ、ぼんやりと見えてきた未来のカタチを可視化したいです。

吉田先生と福岡大学病院消化器外科の医局員の人達が集合している写真
福岡大学病院消化器外科の医局員。長谷川傑教授を中心として、よりよい医療を目指して様々な取り組みをしています。https://fukudaigeka.jimdo.com/

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は、「あらゆる人に起業の機会を。」をコンセプトに、2014年に発足したスタートアップの創出と事業運営を支援するソニーのプログラム。ソニー社内で新規事業プログラムを立ち上げ、ゼロから新規事業を創出した経験とノウハウを活かし、2018年から社外にもサービス提供を開始。経験豊富で幅広いスキルとノウハウをもったアクセラレーターの伴走により650件以上の支援を24業種の企業へ提供。大企業ならではの事情に精通。(※ 2024年2月末時点)

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