Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は、完全オンライン型のアイデアコンテスト「SSAPアイデアコンテスト」を実施します。募集テーマは「あなたの身近な環境問題」です。あなたの大切な「場所」ならではの環境問題と、それを解決する手段のアイデアを募集しています。
コンテストの審査には、ソニー株式会社で海洋プラスチック汚染対策「One Blue Ocean Project」を推進する サステナビリティ推進部 環境グループも参加し、応募者に環境グループ賞を授与します。今回はサステナビリティ推進部 環境グループ シニア環境マネジャーの勝田 淳二に、ソニーが取り組む「One Blue Ocean Project」についてインタビューしました。
ソニーが取り組む環境問題、海洋プラスチック汚染対策。
――まず、勝田さんの「One Blue Ocean Project」での役割をお教えください。
ソニーの環境計画「Road to Zero」における生物多様性を担当しており、「One Blue Ocean Project」ではプロジェクトリーダーとして立上げに尽力しました。
――ソニーは海洋プラスチック汚染対策「One Blue Ocean Project」を推進していますが、これは具体的にどのような取り組みですか。
本プロジェクトは2019年8月に、我々サステナビリティ推進部 環境グループが主導する形でソニーグループ全体における活動として開始しました。近年、海洋プラスチック汚染問題が深刻化しており、これに伴い世界中で海洋プラスチック汚染対策が活発化しています。
ソニーとしても「環境負荷ゼロ」を目指すべく、プラスチック使用量削減とあわせて世界各地の河川や海岸、地域のごみの回収・清掃推進を行っております。
One Blue Ocean Projectでは大きく3つのアクション、「へらそう!製品のプラスチック」「やめよう!使い捨てプラスチック」「はじめよう!プラスチック清掃」を展開しており、それぞれが実際に活動中で、実績も見え始めています。
――ソニーが「One Blue Ocean Project」を推進するのはなぜですか?またこの取り組みで、環境問題にどのように貢献できるのですか?
プラスチックは、軽量で耐久性があり安価に生産できることから、さまざまな製品や包装、緩衝材などに幅広く使われていて、日々の生活に欠かせないものとなっています。しかし、プラスチックの多くは「使い捨て」にされており、利用後にきちんと処理されなかったプラスチックごみが、雨や風に運ばれて海に流れ出てしまっています。
この写真は、私が石川県の千里浜で撮影したものです。砂浜の延長が約8kmもある有名な海岸ですが、大量のごみが果てしなく散乱する状況でした。大部分は日本語のラベルですが、海外のラベルのゴミも多くあり、ゴミがさまざまなルートで漂着していることがうかがえます。これは日本だけではなく海外の海岸でも多く見られる状況です。
プラスチックの年間生産量は過去50年で20倍に増大しましたが、これまでにリサイクルされたのは、生産量全体のわずか9%に過ぎません。多くのプラスチックは温暖化の原因になる焼却や廃棄(埋め立て)によって処理されています。特に、レジ袋やプラスチック容器など、リサイクルされず直接廃棄、焼却されていることが想定されているプラスチックの量も非常に多いのが現状です。
プラスチックごみ問題を解決するために必要となるのは、いわゆる3Rですが、特に使い捨てにされているようなプラスチックの使用量を減らす(Reduce)必要があります。
・リデュース(Reduce)=出すごみの総量を減らすこと
・リユース(Reuse)=再利用すること
・リサイクル(Recycle)=再生産に回すこと
これだけたくさんのプラスチックごみが海に流れ出ている現状を考えると、これから社会全体が使い捨てプラスチックを使わないライフスタイルに変わっていく必要があります。
不要なプラスチックはしっかり「Reduce」した上で正しく使って、正しくリサイクルして、持続可能な形で利用していくということが必要になっていきます。その一環として、再生材を積極的に利用し、バージンプラスチック(※)の使用量を減らしていく努力をソニーも継続的にしていくことが重要だと考えています。
One Blue Ocean Project、3つのアクション。
――「へらそう!製品のプラスチック」の活動内容をお教えください。
ソニーの製品・包装材のプラスチック使用量削減と再生プラスチックの積極利用を推進しています。幅広い製品において、プラスチック部品の小型軽量化とプラスチック包装の削減を進めるとともに、再生プラスチックの使用を拡大します。さらに、製品や包装材にとどまらず、各事業所の生産活動で使用するプラスチックの削減も進めています。
例えば、ソニー製品に使われているプラスチックの削減も開始しています。デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ用バッテリーに使われているブリスターパック包装の紙箱化が進行しています。
――「やめよう!使い捨てプラスチック」の活動内容をお教えください。
ソニーの事業所やオフィスにおける使い捨てプラスチックの使用を順次削減・中止していきます。売店、カフェなどで使っていたプラスチック製のストローやカップ、レジ袋などの提供をとりやめ、繰り返し使える容器等へ代替します。また会議室で提供するペットボトル飲料も順次中止し、代替品に移行します。さらに、会社生活だけではなく、日常生活でも、マイボトル・エコバッグの持参など使い捨てプラスチックを使用しないよう、社員の環境意識の向上に取り組んでいます。
取組みの事例として、マレーシアのペナン島にある事業所では、社員にプロジェクトのロゴが入ったエコバッグを配布し、レジ袋の使用を中止。さらに無料の再利用可能なボトルを提供し、給水スポットを事業所内におくことで、ペットボトルの使用削減を推進しています。社員からは環境負荷の削減だけでなく、お財布にも優しい取り組みだということで好評です。
――「はじめよう!プラスチック清掃」の活動内容をお教えください。
世界各地でプラスチックごみの清掃活動を展開しています。例えば、大分県の事業所では設立当初から近隣海岸の清掃に取り組んでいますし、フィリピンでは社員がボランティアでマニラ湾のごみ拾い活動を行っています。このような清掃活動は、今後さらに規模や地域を拡大しようとしています。
韓国のオフィスでは、会社の近くにある馬山湾での清掃活動を行い、社員と家族30 人が50 リットルのごみ袋 30 袋分のごみを回収しました。参加した社員からは、「報道されている海洋プラスチック汚染に対して、両親と共に海辺を掃除することができたことを本当に誇りに思う。次回も必ず参加したい。」という感想がありました。
Withコロナの時代、深刻化する環境問題を解決するアイデアを募集中!
――2019年に活動開始してから、社内外からの反響はどのようなものがありますか。
テレビを例に挙げると、梱包体積を小型化したことで、2019年度発売の液晶テレビブラビア®の海外モデル85X85G/85XG85シリーズにおいて、前年度モデル比で発泡スチロールの使用量を最大19%削減しました。事業所やオフィスでは、使い捨てプラスチックを削減するため、ソニーグループ全体の事業所の約64%で会議室でのペットボトル飲料の提供を中止し、約86%で売店でのレジ袋の配布を中止しました。また、世界中の71ヶ所の事業所で河川や海岸、地域における清掃活動を開催し、合計約6,700人のソニーグループ社員とその家族が活動に参加しました。
ソニー社員からはこれまでに、「我が家でもより真剣にプラスチック使用について考えないといけないと感じた」「一人一人が意識して、Reduceすることが本当に大事だと思った」「ソニーが環境に対して何ができるのか、自分の業務でも考えたいと思った」「社員がボランティアで参加できる清掃活動などをもっと増やしてほしい」といった意見があり、活動を通して海洋プラスチック問題に対する意識が高まってきていることが伺えます。
――徐々に結果が出始めているのですね。今後は「One Blue Ocean Project」はどのような活動を行う予定ですか。
「へらそう!製品のプラスチック」では、2025年までに新たに設計する小型製品のプラスチック包装材全廃、製品 1 台あたりのプラスチック包装材使用量 10%削減 (2018 年度比)を目指して取り組みを加速していきます。
「やめよう!使い捨てプラスチック」では、会議室での使い捨てプラスチックやレジ袋の使用中止だけでなく、社員食堂や喫茶店、自動販売機などにおいてもプラスチックカップやストロー、ペットボトルなどの使い捨てプラスチックのReduceを積極的に推進していきます。
「はじめよう!プラスチック清掃」では、ソニーグループ全体の事業所で河川や海岸、地域における清掃活動を開催します。
ソニーは今後も海の未来を守るため、グループ全体で「One Blue Ocean Project」を推進していきます。
――SSAPアイデアコンテストでは、地域の環境問題をテーマにアイデアを募集します。アイデア応募を検討している方々に向けて、メッセージをお願いいたします!
Withコロナの時代の働き方としてテレワーク勤務が定着しつつあり、使い捨てプラスチックをオフィスで使用する機会は激減しています。その一方で、衛生面の理由から、使い捨てプラスチックの使用量が増えてきているという報道もされています。また、マスクのポイ捨てが新たな海洋プラスチック汚染の要因になっているということも指摘されています。賢くプラスチックを使用していく上で、Withコロナの時代においても、深刻化する海洋プラスチック汚染を放っておく訳にはいきません。
また世界では、持続可能な社会のデザインとして、サーキュラーエコノミー(循環型経済)をめざす動きが加速しています。従来の「資源を採掘して」「作って」「捨てる」というリニア型経済システムではなく、これまで廃棄されていた製品や包装材などを新たな「資源」と捉え、廃棄物を出すことなく資源を循環させる経済に移行しようとしています。海洋生態系に甚大な悪影響を及ぼしているプラスチックは、ポイ捨てや不法投棄、あるいは意図せずに風などで飛ばされ海洋に流れ込まないように、社会全体で削減に取り組んでいくことが重要です。それと同時に、軽量で耐久性があり安価に生産できるプラスチックを、賢く持続的に使用していくことも求められています。
使い捨てプラスチックの「Reduce」と、サーキュラーエコノミーとして賢く、正しく、持続的にプラスチックを使用していくための良いアイデアをぜひお寄せください!