Sony Startup Acceleration Programから生まれたハイブリッド型スマートウォッチ「wenaTM wrist」(※1)シリーズの新モデルとして、セイコーとコラボレーションした「seiko wena wrist pro Mechanical set -LOWERCASE Edition-」が発売されました。今回のモデルでは、異業種コラボレーションの草分けとして知られるLOWERCASE代表・クリエイティブディレクター梶原由景さんがデザインを監修。
本記事では、梶原さんとwena事業責任者の對馬哲平、wena wrist pro Designerの青野達人に、新モデルが生まれた背景や想いを語っていただきます。
※1 「wena」は、ソニー株式会社の商標です。その他本文中に記載されている会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。
細部までビンテージなこだわりを。ビジネスマンに届けたいファッションウォッチ。
――最初に、「SEIKO | wena -Produced by LOWERCASE」について教えてください。
對馬:セイコーブランドとのコラボレーションモデルで、今回は特別にLOWERCASEの梶原さんに監修していただきました。ビンテージテイストでクラッシックな機械式時計でありながら、実はスマートウォッチ、という意外性を表現した腕時計です。
梶原:ビジネスマンにオンでもオフでも使ってほしいモデルです。スーツに合わせても違和感無くお洒落に使えるデザインなのに、スマートウォッチの機能がついている。このモデルから得られる恩恵はかなり大きいと思います。
――このモデルの特徴を教えてください。
對馬:まずはヘッド部分が、LOWERCASE監修のビンテージテイストの機械式のものになっている点です。バンド部分には電子マネーや通知機能などのスマートウォッチの機能を備えつつ、腕時計としてのたたずまいも両立しています。
梶原:ヘッド部分は、セイコーらしいデザインでスタイリッシュに仕上がったと思います。針とインデックスにもこだわり、ビンテージものの醍醐味である「エイジング」をイメージ。今回のモデルは、シルバーとプレミアムブラックの2色ですが、実はモデルごとに、インデックス部分のルミ(※2)の色味もちょっとずつ変えています。
※2 ルミブライト(高輝度蓄光塗料)
太陽光や照明器具の明りを短時間(約10分間: 500ルクス以上)で吸収して蓄え、暗い中で長時間(約3~5時間)光を放つ夜光塗料です。
對馬:バンド部にEdition numberを刻印しているのもポイントですね。シルバーとプレミアムブラック限定各300本で、バンド部分にそれぞれ001から300まで、Edition numberを刻印しました。過去のモデルでも、こういった刻印は限定感があると好評です。
wenaの原点「wena wrist」。リーダー・對馬と開発者・青野の想いとこだわり。
――そもそも、今回のモデルのベースとなった「wena wrist」のアイデアが生まれたきっかけは?
對馬:wena wristのアイデアのベースは、学生の頃から私自身が欲しいと思っていたものでした。もともと腕時計が好きで、デザインがお気に入りの腕時計と便利なスマートウォッチを、両腕につけて生活していました。しかし、周囲から少し変な目で見られることも。腕時計を複数つけることは社会には受け入れてもらえなかったのです。腕時計の感性的な価値と機能的な価値を両立させたい、そう思ったのがきっかけでした。
――“スマートウォッチ”を“普通の腕時計”らしく作るために工夫した点はありますか?
青野:「wena wrist pro」を作るにあたって最も工夫したと同時に苦労したのは、普通の腕時計に見えるよう“コンパクトに仕上げること”です。電気部品を小さくすることには限界があるため、筐体構造を最小化する必要がありました。通常は防水の接着幅が筐体の幅に大きく響いてしまうのですが、今回は接着剤の経路を三次元的にすることで筐体サイズに影響しないエリアに接着幅を追いやり、小型化を実現しました。経路がアクロバティックになったぶん、製造時の調整には苦労しました。
――様々な工夫の上で、wenaのシンプルな作りが実現されているのですね。こだわった点はありますか?
青野:“分解されても美しい“状態を目指しました。部品の配置の無駄を省き、リーズナブルな配置に。また基板やフレキもモノトーンで統一。防水の内蓋もあえて半透明にして、部品が透けて美しく見えるようにしました。どこまでも美しいものを作りたい、できるだけ小さくしたい、というこだわりからです。
對馬:部品一つ一つがどこに配置されるべきかということを突き詰めていった究極の形が、最終形になっています。部品の形状や配置など、それぞれ全てに意味があります。
青野:構造を考え尽くすと、自然と美しいものが出来上がりましたね。
對馬:wenaはその商品特性上、コラボモデルを大切にしています。様々なコラボ先に独自のカラーを出してもらいたいので、wenaブランドとしては、フラットでニュートラルでありたいというポリシーのもと、モノトーンの世界観を大切にしています。そのポリシーを貫き、中の部品まですべてモノトーンにこだわり抜いたのが「wena wrist pro」です。
「今、何が面白いのか」。遠目から見るとファッションウォッチ、本当はスマートウォッチという意外性を。
――梶原さんは、普段はどのような商品のディレクションを担当されていますか?
梶原:本当に色々な分野でディレクションを担当させていただいています。例えばアウトドアブランドのリブランディングや、吉田カバン“PORTER”の別注など。全てのディレクションで共通して大切にしているのは、「いち消費者の立場で何が良いのか、面白いのか」という視点です。
――wenaの印象はどうでしたか?
梶原:wenaの存在自体は、初代のモデルが発表された当初から知っていました。初めて知ったときには、「時計のバンド部分にスマートウォッチの機能を詰め込む」という逆転の発想が、ものすごく面白いと感じました。
新しいものは全て試したくなる性分なので。
對馬:そう言っていただけて嬉しいですね。
梶原:あと、私の知り合いでカメラマンをしている人がwenaのSEIKO digital(※3)を持っていて。彼は会社の登山部にも所属しているようなアクティブなタイプで、登山の時にそのモデルを使って気圧や高度を測ったりするという話を聞きました。そんな使い方があるのか、と感心しました。ちょうどそのタイミングで今回のお話をいただいて、面白そうだと思いましたね。
※3 セイコーの登山用デジタルソーラーヘッドを装着し、wena wrist activeがよりファッショナブルに進化したアウトドアスマートウォッチ。様々なアクティビティシーンにおいてもライフスタイルをサポート。
――今回、ビンテージデザインにしたこだわりは?
梶原:今回のデザインは、ファッションウォッチとして成立しているのに実はスマートウォッチ、という点を意識しています。デザインはファッション性に特化して、セイコーらしいデザインを踏襲しつつ、ビンテージ感があるエイジングの塗装を施しました。遠目に見ると普通のファッションウォッチで、よく見ると、細部のこだわりがわかってお洒落。針とインデックスにエイジングルミも施しています。
對馬:文字盤の裏面はシースルーにして、時計を置いたときに、機械式の部品がちらっと見える仕様になっています。
梶原:そうですね。時計自身にはビンテージ感があるのに、バンド部分がそれに反してちょっと未来的なのも特徴ですかね。ジェラルド・ジェンタという、世界的に有名な天才時計デザイナーがいるのですが、結果的に彼が手掛けたデザインにも似たバランスになっているかも知れません。
第一線で活躍する全ての人へ、wenaのコンセプトを届けたい。
――今回のモデルへの想いを、それぞれの観点からお聞かせください。
青野:伝統的な時計らしさを大切にして、スマートな機能を入れていく。オーソドックスなドレスウォッチという点で、これまでのwenaの通常モデル以上にwenaのコンセプトが強調されたものになっていると思います。
この商品を機に、更にこのコンセプトが浸透していくといいなと思っています。
對馬:wenaを持っているお客様は40代の方が多く、その新しさに惹かれて、自分の2、3本目の時計として買っていく人が多いです。今回は梶原さんによるLOWERCASEのデザインも入っていて、wenaのこれまでのお客様の層にピッタリなのではないかなと思います。
梶原:第一線で活躍する全ての人に届けたいですね。モデル本体はシルバーとプレミアムブラックの2色あって、それぞれの良さがあります。私のイメージでは、シルバーはオーセンティックなドレスウィッチとしても受け入れられると思うので、部長クラスとか少し年代が上の方でも合いますし、プレミアムブラックはコンテンポラリーな印象なので若い人にもおススメできますね。