2021.01.25
サステイナブルな世界の実現 ー国連プロジェクト・サービス機関とSSAPー

#08 ファイナリスト「Kivu Cold Group」インタビュー

ソニーは国連プロジェクト・サービス機関(以下UNOPS)と、2020年2月にイノベーション領域における協業契約を締結しました。UNOPSが開催する「Global Innovation Challenge(以下GIC)」ではテーマを共同で決定し、持続可能な開発目標(SDGs)に取り組むスタートアップや企業の選定を共同で行っています。

今回は、UNOPS Global Innovation Challengeのファイナリストに選ばれたチームの1つ、「Kivu Cold Group」のCOO イマニシムエ・サムエルさんに、Global Innovation Challengeに応募した背景や、UNOPS主催のBootcamp(集中研修)の様子、チームの今後の計画等についてインタビューしました。

ルワンダと日本の混合チームではじめた、スタートアップ。

――今回Global Innovation Challengeに参加された「Kivu Cold Group」とは、どのようなチームなのでしょうか。

Kivu Cold Groupはルワンダと日本の混合チームで、正確にはルワンダの会社4社(ASI Energy社、Dynamic Solutions社、KivuCold社、SHORA Ventures社)と日本の会社2社(株式会社ロケットバッテリー、コールドストレージ・ジャパン株式会社)による合弁会社です。現在Kivu Cold Groupのメンバーは計3名で、CEOのアレックスさん(SHORA Ventures社 Managing Director、兼 ICT商工会議所 CEO)、General Managerの橋本さん(株式会社ロケットバッテリー)、そしてCOOとして私が参画しています。

合弁会社として計7の個人と企業が出資をしている形のため、定期的に現在のメンバーでのミーティングも行っており、まだ新しい会社ながら、ルワンダから4名と日本から3名の株主を交えた株主総会を開催するなど、緊張感も定期的に味わっています。

Kivu Cold Group COO イマニシムエ・サムエルさん
Kivu Cold Group COO イマニシムエ・サムエルさん

――その中でのサムエルさんの役割をお教えください。

私はコンサルティング事業やソフトウェア開発を行うレックスパート・コミュニケーションズ株式会社の所属であり、Kivu Cold GroupではCOOとして、事業全体を見る役割を担っています。

――サムエルさんご自身のキャリアもお伺いできますでしょうか。

私はルワンダ出身で両親もルワンダ人ですが、日本には家族の事情で小学1年生の頃から住んでいます。それからは大学まで日本で教育を受けました。当時は学校ではもちろん日本人の友達と日本的な生活をしつつ、家庭ではルワンダ人の家族とルワンダ風の生活をするという、独特なライフスタイルを送っていた記憶があります。

大学卒業後、イギリスの大学院に進んだ後、ルワンダ大使館で広報担当として働いていました。大使館での広報の役割は主に「日本企業にルワンダ(アフリカ)の魅力を伝え、企業のアフリカ進出を促す」こと。自分のバックグラウンドを生かし約4年半の間広報業務に従事した後、フリーランスに転身しました。それをきっかけに、ルワンダでも事業をしておりそれまで大使館での仕事を通して面識のあった、レックスバート・コミュニケーションズ株式会社の代表取締役田中秀和氏と話す機会があり、「一緒に何かできないか?」と話が発展。2018年4月からお手伝いすることから始まり、現在はコンサルティング事業部 部長として、コンサルティング業務を担当しています。レックスバート・コミュニケーションズでも、ルワンダ大使館での仕事と似た軸で「アフリカ進出をする日本企業のサポート」を行っています。

日本では近年、アフリカに対する興味が高まっていますし、ビジネスの市場としても注目されています。そんな今だからこそ、アフリカとのコネクションや現地の知見がある我々が、サポートをするべきタイミングだと考えています。

サムエルさんが大使館時代、大学にてルワンダに関する講義を行った際の様子
サムエルさんが大使館時代、大学にてルワンダに関する講義を行った際の様子

ポストハーベスト・ロス(※)を、ソーラーを活用して解決したい。

――「Kivu Cold Group」が設立された背景は?

2019年8月に横浜で日本政府が主導し国連等と共同で開催した、アフリカの開発をテーマとする国際会議「Tokyo International Conference on African Development(アフリカ開発会議、以下TICAD)」での出会いがきっかけでした。TICADは、アフリカやパートナー諸国の会社やNGO等が参加し交流する場で、ここで後にKivu Cold Groupのメンバーとなる6社が出会ったのです。
Kivu Cold Group CEOのアレックスがもともと「ポストハーベスト・ロスを、ソーラーを活用して解決したい」というアイデアを強く持っていて、それまで交流のあった神戸市のブースでちょうどそれを実現する技術を持った日本の2社(株式会社ロケットバッテリーとコールドストレージ・ジャパン株式会社)に出会い、そこに何度も通って「一緒に事業をやりたい」と声をかけたところから、この話がスタートしました。

日本の2社は「技術を持った会社」(バッテリーの製造販売等を行う株式会社ロケットバッテリーと、先端テクノロジーとロジスティックのノウハウを掛け合わせた次世代型コールドチェーンを作るコールドストレージジャパン株式会社)。ルワンダの4社は「事業会社」として「ポストハーベスト・ロス」や、今回のソリューションに関係する「電力やエネルギー」などの課題に関する事業を行っていました。TICADの場で、彼らの需要と供給、アイデアと技術がマッチしたようなイメージですね。

私はアレックスさんとは付き合いがあり、彼がTICAD後すぐに帰国しなければいけないこともあり、「TICADで出会った2社があるんだけど、フォローアップしてくれないか?」と相談を受けました。彼らとのミーティングで私は、彼の課題感やソリューションに共感し、面白そうだと思いました。そして、私からは、ルワンダの「ポストハーベスト・ロス」の課題についての共有などを行い、秋頃のルワンダ訪問を提案しました。11月には早速ルワンダに訪問し現地の課題をヒアリング。そして2020年2月にも再度ルワンダに訪問し、そこで合弁会社の設立や事業プラン策定等に取り組み始めました。

※収穫から消費者の口に入るまでのロス

――今回、「農作物の収穫後のロスを軽減する低温保存システム&サプライチェーン」というテーマで参加されていましたが、この課題の背景や課題感を教えてください。

我々が取り組もうとしているのは、アフリカで課題となっている「ポストハーベスト・ロス」ですが、同時に「電力」という問題も付随してきます。

まず「ポストハーベスト・ロス」について。作物によって違いはあるものの、作物のおよそ30~50%が農地から人間の口に入るまでの間にロストされていると言われています。これは「農業」の領域での課題であると共に、アフリカの人々の「飢餓」の課題にも繋がります。つまり、「ポストハーベスト・ロス」が解決されると、2つのメリットがあるのです。まず1つ目に、農業の効率があがり農家の収入が増えます。2つ目に、農業の効率化により食物の価格が下がり、人々が低価格で良いものを食べられるようになります。最適な価格と最適な市場での供給が実現するのです。

次に「電力」に関して。電力は、「ポストハーベスト・ロス」の解決には必須で、農家や市場、またその移動の過程で、食物を冷蔵冷凍していくために使用されます。市場には電線網があり、冷蔵庫を使えるのでソリューションは既にあります。しかし、農地から市場までの移動の過程で、作物の冷凍冷蔵を保つソリューションが無いのです。アフリカでは、人口のおよそ50%は電力にアクセスできないと言われています。一方で、市場に既にあるような電線網を発達させようとすると、莫大な費用がかかってしまいます。
我々が提案するのは、そんな問題を「ソーラーとリチウムイオンバッテリーによる充電と電力供給システムをつかって実現する」というソリューション。これを農家の人たちにも提供できれば、「ポストハーベスト・ロス」が解決するだけでなく、彼らの生活に必要な電力も賄えます。更には、今まで電力不足が原因で実現できていなかった、新しいイノベーティブな事業が生まれる可能性も秘めています。

写真左:ルワンダでのプロトタイプ組み立ての様子、写真右:プロトタイプの完成形
写真左:ルワンダでのプロトタイプ組み立ての様子、写真右:プロトタイプの完成形

――これまで抱えている課題を解決するビジネスが無かったのはなぜだと思われますか。

ルワンダの企業の中には、実は既に「ポストハーベスト・ロス」問題を解決するためにソーラーによる電力を提供していた会社があります。しかし、ソーラー発電を実現するためのコストがかかりすぎることが原因で採算が合わず、すぐに事業を撤退することになりました。
「ポストハーベスト・ロス」という問題を解決するうえで、我々は様々な最新技術を駆使して、それらを低コストで実現することが可能なのではないかと考えています。そこに、我々がビジネスとして参入する意味があると考えています。

客観的なアドバイスが自信に。PoCを成功、他国展開のシナリオを実現したい。

――Bootcampに参加されるまでの間、テーマの構想にあたり課題に感じていた点や改善したかった点はございましたか。

果たして「我々が提供したいもの」=「ユーザーが欲しいもの」なのか?という点を課題に感じていました。我々が持つ課題感やアイデアがインタビューや文献等により生み出されたもので、「仮説」の域をでていない、という点を不安に感じていたのです。実際にアフリカ現地にプロトタイプを持って行って動かしたことがあるわけではないので、もしかしたら実際に動かしてみたら、ピュアにソーラーだけにするのではなく、一部電線網にした方がよいかもしれない等、「本当の課題」に直面するのではないかと考えていたのです。

2021年3月から、UNOPSのプログラムを通じて、PoC(Proof of Concept:概念実証)を行う予定なので、そこでのフィードバックを反映しながら、よりビジネスとして磨きをかけていきたいと思っています。

――Bootcampでは、SSAPからはどのような支援を受けましたか?またそこから得た気付きなどがあればお教えください。

SSAPの方々からは、アイデアのブラッシュアップのための講義やメンタリング等をしていただきました。それらを通じて、「事業化に向けた具体的なToDo」や「何が足りないか」等を、客観的な視点で再確認することができました。
また大きな気付きがもう一つあり、それはUNOPS関係者やSSAPの方から教えてもらった「日本とルワンダの混合チームという点が、Kivu Cold Groupのユニークさだよ」ということ。我々にとっては、それが普通のことになっていましたが、他の参加者を見渡すと、ほぼ1つの国の中から出てきたアイデアばかり。2つの国が融合してやり切ろうとしていること自体が価値であり強みだ、と気付かされました。

Kivu Cold Groupのメンバー集合写真
Kivu Cold Groupのメンバー集合写真

また、我々Kivu Cold GroupがBootcampに参加することで確かめたかったのが、「社会的に価値があるビジネスになっているか」ということでした。グローバル企業の中で、スタートアップ育成の知見やノウハウを持っているSSAPからポジティブな反応をもらえたということは、我々にとってかなり大きな手ごたえであり自信となっています。
既に2020年12月から早速、UNOPSによる育成支援はスタートしており、SSAPには2回メンタリングをしていただきました。事業化のタイムラインの描き方や、現状把握やタスク管理等、宿題をいただきながら沢山学ばせていただいています。

――今後の活動への意気込みや、UNOPS のIncubationプログラムに期待することはございますか。

一番大きい目標は、我々の構想を実現し、社会課題を解決することはもちろんのこと、ビジネスとして展開していくこと。そのための最初の一歩として、まずはPoCを通じて一つの市場で小さくまわしてみて、そこから他国への展開等をしていきたいと考えています。

Kivu Cold Groupは約1年前に構想ができ、2020年3月に関係者・企業間でのMoU(了解覚書)締結、9月に登記と、出来たばかりスタートアップなので、まだまだノウハウもコネクションも足りないと思っています。UNOPSの世界的なコネクション等の協力をいただきながら私たちKivu Cold Groupの露出度を高めていきつつ、ルワンダでのPoCを成功させ、他国展開のシナリオを実現していきたいです。

写真左より、サムエルさん、SSAPアクセラレーター 小澤信夫

>>SSAPの提供サービス等に関するお問い合わせはこちら

あらゆる人に起業の機会を。

Sony Startup Acceleration Programはソニーが手がけるスタートアップの創出と事業運営を支援するプログラムです。2014年から7年間で、60件以上の事業化検証、17の事業を創出(2021年3月末時点)。それらを通じて培った経験やノウハウを生かし、アイデア出しから事業運営、販売、アライアンス・事業拡大に至るまで総合的に支援する仕組みを整備し、スタートアップ支援サービスとしてみなさまにご提供しています。

ランキング