2020.08.06
サステイナブルな世界の実現 ー国連プロジェクト・サービス機関とSSAPー

#05 環境問題解決に貢献するソニーの技術「地球センシング」

ソニーは国連プロジェクト・サービス機関(以下UNOPS)と、2020年2月にイノベーション領域における協業契約を締結しました。UNOPSが開催する「Global Innovation Challenge(以下GIC)」ではテーマを共同で決定し、持続可能な開発目標(SDGs)に取り組むスタートアップや企業の選定を共同で行っています。

今回は、ソニー株式会社 R&Dセンター VPの廣井 聡幸に、SDGsに対し描くゴール、開発している技術や今後の展望についてインタビューしました。
(【講演動画 #03】ソニー株式会社 R&Dセンター VP 廣井 聡幸|Global Innovation Challenge「サステイナブル社会の実現へ向けたIoT技術について講演」はこちらからご覧いただけます。)

技術の力を用い、「AIで地球社会を見守る」。

――廣井さんのソニーR&Dセンターでのお立場・役割をお教えください。

ソニーのR&Dセンターでは現在、各部組織が主体性をもって活動する体制を取っていますが、私はその中のシステム系や基盤技術の領域で、いろいろな人たちと研究開発の方向性、課題解決、新規アイデアの創出など行っています。
また、対外的には国立研究開発法人「科学技術振興機構(JST)」が主導するセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラムにて、東京工業大学 地球インクルーシブセンシング研究拠点のプロジェクトリーダーを、またJST内 戦略的創造研究推進事業(CREST)の領域アドバイザーを担当しています。

――廣井さんは地球社会の持続への関心が高いとのことですが、どの分野への関心がおありですか。また、その分野への関心をもった経緯を教えて下さい。

今後、世界的に水不足が起こるといわれていますが、水の問題、温暖化、土壌環境問題、農薬肥料の過剰利用の問題、畜産など、様々なことに関心があります。私が地球環境問題を最初に意識したのは20年ほど前ですが、本当にいろいろと考え始めたのは中国の経済成長率で二桁が続いた時でした。それまでは、環境負荷のかかる生活を送っている先進国人口は6億人でしたが、中国を含めていくとその人口がどんどん増えていく。これは大変なことになる、と思いました。

また、今から10年ほど前、私はソニー・コンピュータエンタテインメント(現在のソニー・インタラクティブエンタテインメント)でプレイステーションのLSI(集積回路)を開発していましたが、1平方ミリのシリコンで昔のスーパーコンピューターと同等の性能が出せるということを実感し、この半導体の進化でこれから起こるさまざまな社会問題を解決できるのでは、と考えるようになりました。
当時認知症の方が徘徊で亡くなる事故や、社会的ストレスでメンタル疾患を起こす人が増えており、私も父親が認知症だったこともあり、家族への負担を実感していましたので、ウエアラブルデバイスで不都合の事態の予兆を検知し、身近な人に伝えて事故を未然防止する技術についていろいろと考えていました。当時はSDGsという言葉もなかったですが、日本が高齢化社会へ突入した時代でもあり、このような問題を放っておけば、人々のQoL(Quality of Life)は将来維持できなくなると感じていました。

――「持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)」に対し、R&Dセンターはどのようなゴールを描いていますか。

SDGsが対象とする分野は多岐にわたりますが、「AIで地球社会を見守る」ことができるようになれば、サステイナブルな社会を、非常に広範囲で実現できるようになると考えています。

(Sony Startup Acceleration Programは 持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています。)

また、R&Dセンターでは様々な社会問題解決へ向けた技術開発や検討を行っています。開発する技術は、『これは必要だ』と未来から求められるものでなければなりません。また他社のほうがよいソリューションを提供できるのであれば、われわれソニーでやる意味はないかもしれません。まだ見えない将来の市場から必要とされ、未来の多様な課題解決やニーズに対応でき、そして多くの方々から支持される。それを実現する技術開発を目指して日々取り組んでいます。

AIを用い、環境からのメッセージを人々にフィードバックする、「地球センシング」。

――R&DセンターではSDGsの達成に向け日々技術開発に取り組んでいるとのことですが、その一環で現在、「地球センシング」に関する開発プロジェクトが発足していると伺いました。まず、「地球センシング」(リアルタイムセンシング)とは具体的に何を指すのでしょうか。

「不都合な事態が起こる前に未然防止する」ためには、今まで人々が気付かなかった環境からの”声”や”メッセージ”を、AIを用いて人が理解できるメッセージに変換し、人々にフィードバックする、ということが必要となります。そのためには今起こっていることを「リアルタイムにセンシングする」だけではなく、「どういった行動をとらなければならないか」を、AIを使い行動へつながるメッセージに変えて、リアルタイムに人々に知らせる必要があります。

言い換えると、人々がプラネットで何が起こっているかをリアルタイムで認識する。私たちの住むプラネット=地球という概念が人々の心に無意識に宿り、人間社会の枠から地球社会という枠へと拡張するためのセンシング技術と考えています。

――「地球センシング」(リアルタイムセンシング)は具体的に、社会に対してどのような影響をもたらすのですか。

未然防止や効率化が求められる多くの分野が対象となります。例えば農業では精密農業や節水、農薬の削減、病気の予防など。畜産では病気の早期発見や繁殖の効率化、トレーサビリティー(追跡可能性)の実現。水産業における養殖管理や生産工場の効率化、橋や建造物の老朽化対策。登山者、お年寄りや子供の見守り。害獣対策や豪雨による土砂崩れ災害予知など、様々なものがあります。

概念図: AIエージェントが常にものごとを見守っており、異変を察知したら簡潔な情報(省電力)ですぐに知らせる

また、温室効果ガスの削減が今急務となっていますが、亜酸化窒素(N2O)はCO2の300倍の温室効果をもつといわれており、この削減に大きく貢献する有機農法の効率向上や、土壌の炭素固定を促進する土壌管理など、温暖化対策にも貢献できる技術と考えています。

――様々な分野で貢献できる技術なのですね。現在、「地球センシング」のテーマで、R&Dセンターにて取り組んでいる開発プロジェクトは具体的に何がありますか。

超低消費電力のAIチップ、水分センサー、プラットフォーム基盤技術開発などを行なっていますが、実証実験としては山岳地やモンゴルの極寒環境における羊の行動認識、ミニトマトを使った精密農業の実証実験などを行っています。
ソニーでは今まで、人が住んでいる環境での電子機器を主に手掛けてきましたが、このようなセンシングは人里離れた環境で行うので、電子機器の動作環境や要求される消費電力が全く異なり、非常にチャレンジングな技術開発が要求されています。

目指すのは、水不足・環境問題解決への貢献。R&Dが技術支援を、SSAPが事業化支援を。

――R&Dセンターとして地球規模の環境問題解決に期待すること、またその中で実現したいことについて教えてください。

私たちがいま開発している技術は、水不足や温暖化に対して貢献できるものです。土壌微生物や植物が本来持つ力を引き出し、地球環境と共存した形で人類社会の繁栄を継続する。そのためには様々な分野の大学研究機関とのコラボレーションが必要となりますが、今までのエレクトロニクス分野に加え、様々な専門分野に対しても取り組んでいきたいと考えています。

――SSAPとUNOPSとの協業やGlobal Innovation Challengeに、技術を持つR&Dセンターとして期待することについて教えてください。

この度、気候変動という非常に大きなテーマでUNOPSとSSAPが協業することに伴い、R&Dセンターも参画できることを大変ありがたく思っています。
SDGsを解決するには多様な活動が必要となるため、あらゆる人がスタートアップを創出できるよう支援が必要になると思いますが、SSAPがその役割を担当すると聞いて重要性を感じます。またR&Dセンターが開発している技術を気候変動問題に検討いただけることは大変うれしい限りです。私たちもぜひ支援させていただきたいと思います。

今、ミレニアル世代、Z世代の人たちが社会問題の解決に対して非常に意識が高いと言われています。SSAPは今後そのような方々の活動を支援し、私たちR&Dセンターはそのような方々が活動しやすいように技術を準備する。サステイナブル社会の実現へ向け、未来へ向けた大きな可能性を感じます。

あらゆる人に起業の機会を。

Sony Startup Acceleration Programはソニーが手がけるスタートアップの創出と事業運営を支援するプログラムです。2014年から6年間で、50件以上の事業化検証、15の事業を創出(2020年7月1日時点)。それらを通じて培った経験やノウハウを生かし、アイデア出しから事業運営、販売、アライアンス・事業拡大に至るまで総合的に支援する仕組みを整備し、スタートアップ支援サービスとしてみなさまにご提供しています。

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