2024.12.19

人とのつながりをコンセプトに商品を開発、素材のピースを"結う"ことでアイテムを作れるテキスタイル技術「YUKIZNA」

LIVE BORN株式会社(以下、ライブボーン)が手掛ける、素材をピース上に裁断しパズルのようにつないでいく世界初のテキスタイル技術「YUKIZNA(ユキズナ)」と、YUKIZNAのテキスタイル技術を使ったハンドメイドキット「LEATHER PUZZLE YUU(レザーパズルユー)」。2024年7月にはYUKIZNAの世界を体験できる「YUKIZA Craft & Cafe」もオープンされました。

Sony Acceleration Platformは、YUKIZNAの世界観を発信していくにあたり、コンセプトムービーの制作支援を行いました。ライブボーンから世界初の新たな製品が生まれた背景は?コンセプトムービー制作にあたってのストーリーや今後の想いとは?ライブボーンが取り組む新たな挑戦をご紹介します。

LIVE BORN株式会社常務執行役員 小河内 功佑さん
Sony Acceleration Platform事業開発担当 アクセラレーター 荒木 瑠里

――小河内さんのご所属とプロジェクトでの役割、またこれまでのキャリアを簡単に教えてください。

お客様の声から商品開発に至った「LEATHER PUZZLE YUU」

小河内さん:社内弁理士として商品開発に関わりながら、特許権などの知的財産権の取得業務、知財ライセンス交渉、契約書作成業務、権利侵害対応に携わってきました。
商品開発の初期段階では、チームで新しいアイデアの発掘を行いながら知財戦略を練ります。特許調査を行い、開発方針が定まったら権利化業務と商品開発を並行して進めます。
商品開発の際には、外部のデザイナーや美術大学の学生とのデザイン共同開発プロジェクトを組むことも多く、社内で築き上げてきたものを重視しながらも、既成概念にとらわれない自由な発想を取り入れることも大事にしています。

――YUKIZNA、LEATHER PUZZLE YUUの概要を教えてください。

小河内さん:"YUKIZNA"は、YUI『結い(助け合い)』とKIZNA『絆(人とつながり)』からなる造語です。素材をピース状に裁断し、パズルのようにつないでいく技術を使用しています。ピースにはオス型とメス型があり、それぞれが対応して結合する構造になっています。

ピースにはオス型とメス型


現在展開しているアイテムは、革を使用しているものがメインですが、革以外の素材を使用することもできます。
LEATEHR PUZZLE YUUは、ピースやパーツの色を組み合わせて、オリジナルのアイテムづくりができる革のハンドメイドキットです。縫製する必要はなく、ピンセット(必要に応じてヤットコ)を使ってピースとパーツをつないでいけばアイテムが完成するのが特長です。最大の魅力はデザインやカラーバリエーションに制限が無く、無限に広がる可能性と世界観を作り出せることです。ピースの色の組み合わせによって、さまざまなバリエーションの表現ができるので、白地のキャンバスに絵を描くような、自由でクリエイティブな体験ができます。

――商品開発に至るきっかけや背景を教えてください。

小河内さん:元々、ピースの技術を使った出来合いの商品を展開していましたが、お客様から自分で作ってみたいので部品としてピースを販売してほしいという要望もありました。
また、従来の革の手作りキットでは縫製が必要なものが多く、色を自由に選んで作れるものがありませんでした。
このピースの技術を世の中の多くの人に知ってもらい、気軽に体験して手作りの喜びを感じてもらいたい。自分で作ったものを友人に見せたり、大事な人にプレゼントしたり、アイテムづくりを通じて人とのつながりを感じてもらいたいという想いは、まさにYUKIZNAのコンセプトにマッチするものでした。
そこで、お客様自身で縫製しなくても、好みのアイテムを作れるキットを開発するに至りました。

――Sony Acceleration Platformに支援を依頼頂いた背景を教えてください。

YUKIZNAの世界観と可能性を伝えるためのコンセプトムービー制作

小河内さん:当初、ピースを結うだけで縫製することなくアイテム作れる点を、上手くお客様に伝えることができておらず課題を感じていました。また、「人とのつながり」をコンセプトにした可能性と世界観をビジュアルで表現するにはどうしたら良いか悩んでいました。
自分でやってみて初めて分かる、作る楽しさ。平面から立体になっていく感動。ピースやパーツの色を自由に変えることで無限に広がるデザインバリーエション。このピースを使えば、バッグでも、洋服でも、何でも作れるという可能性をコンセプト動画にして表現したいと思い、Sony Acceleration Platformに支援を依頼しました。

――Sony Acceleration Platformの支援内容と工夫したポイント

荒木:今回、YUKIZNAのコンセプトムービーの制作をご支援しました。制作にあたっては、ヒアリングを通してどのような目的で、どのような人に向けて、映像を見た後にどのような行動を起こしてもらいたいか、というところから整理を始めていきました。
映像で伝える内容としては、YUKIZNAの世界観やアイテムそのもの、ピースを結うだけで縫製することなくアイテムを作れるということだったのですが、これは今までのレザークラフトキット等の作り方とは全く異なります。ですので、初めて見る人がYUKIZNAを手に取った驚きやワクワク感をそのまま伝えられたら、YUKIZNAの魅力が伝わるのではと思いました。映像の監督とも相談を重ね、「YUKIZNA×ARTIST」という企画をご提案し、YUKIZNAが生まれたきっかけとなっている美術大学の学生に出演いただきました。学生の方たちがYUKIZNAを手に取ってもらうところから実際に作品をつくってもらうところまで、一連の流れを体験いただきながらその様子を映像にしています。

撮影風景

――今回制作したコンセプトムービーの展開用途や制作にあたって印象に残っている点等を教えてください。

小河内さん:実店舗をオープンし、お客様との対面での接点を持つことができるようになりました。この店舗で今回制作して頂いたコンセプトムービーを流して、YUKIZNAの世界観やこれから目指すビジョンを伝えています。また、ECサイトやインスタグラムでコンセプトムービーを公開して、実際に商品を手にしなくてもYUKIZNAのことを理解してもらえるように活用しています。
制作にあたって一番印象に残っているのは、コンセプトムービーの演出コンテをご提案頂いた際に、ムービーの導入部にアイテムが分解されて最後に1つのピースになる描写を入れて頂いたことです。
演出コンテをご提案頂くまでに何度も打合せを重ねて、私たちが課題に感じていることや伝えたいことを深く堀下げて頂きました。1つのピースから可能性が無限に広がっていく世界観とストーリーを、初めてYUKIZNAに触れる人に端的に伝えられる素晴らしい着想だと思いました。

荒木:私は撮影当日が印象深かったです。今回美術大学の学生の方に出演いただきましたが、YUKIZNAの基本的な結い方をレクチャーしていただいた後、すぐに結い方をマスターされて、ピースを連結していく作業もとても速くて驚きました。アイテムを手に取ってもらう様子からの撮影でしたので、撮影の日に初めてアイテムをつくる工程を試していただきましたが、本当に誰でも、簡単につくることができるキットなんだなと感じた瞬間でした。
少し難しい部分はお互いに教え合ったり、また、YUKIZNAでこんなアイテムを作ってみたいと楽しそうに話している様子は、まさにYUKIZNを通して人と人とがつながる瞬間だなぁと感じて印象深かったです。

――Sony Acceleration Platformの支援を受けて頂いていかがでしたか。支援によりプロジェクトやメンバーに変化があれば教えてください。

小河内さん:Sony Acceleration Platformの支援を受ける前は、ピースからアイテムが出来上がっていくチュートリアルのようなムービーをイメージしていました。
今回支援を受けたことで、プロダクトから離れたより広いブランドの世界観、将来性を伝えられるムービーを制作して頂くことができました。
ムービーの制作にあたり、改めて商品の特長やターゲット、メンバーの考えを深く掘り下げ整理して頂いたことで、私たちのYUKIZNAに対する考えや想いが明瞭になり、今後ブランドを広げていくにあたってのターゲット層、伝えたい世界観と将来性を強く意識するようになりました。

――今後の展開にかける想いを教えてください。

世の中に面白みと感動をもたらす成長し続けるブランドを目指す

小河内さん:YUKIZNAは無限の可能性のある唯一無二のブランドになると考えています。現在展開しているアイテムはバッグ・小物類が中心ですが、今後はインテリア、洋服などの展開も考えています。フェルトや和紙などの異素材での展開も可能なので、革小物以外の展開によるターゲット層の拡充も考えられます。アーティストとのコラボレーションなどを積極的に行い、世の中に面白味と感動をもたらす成長し続けるブランドになることが目標です。
実店舗ではスタッフに気軽に相談して頂きながら、自分好みのアイテム選びをゆっくり楽しんで頂きたいです。ワークショップなどの体験を通じて、オリジナルのものづくりを楽しんでもらい、自分の中にあるクリエイティブな発見をしてもらう場所です。自分が思い描いたものを表現し、出来上がったものを自分で使用したり人にプレゼントしたりする喜びを感じて頂きたいです。

荒木:今回コンセプトムービーの制作をご支援させていただきましたが、制作にあたってご一緒いただく映像監督、制作チーム、そして出演いただいた美術大学の学生の方々1人1人がYUKIZNAのプロダクトに共感していただき、まさにYUKIZNAのコンセプトでもある「人とのつながり」が生まれて今回の制作が進んでいったように感じています。
プロジェクトメンバーの皆さまとお話させていただく度に、YUKIZNAの新しい商品企画のお話やコラボレーションの構想などを聞かせていただいていました。新規事業のスピード感を肌で感じるとともに、これからの拡がりがとても楽しみなプロダクトだなぁと感じています。
実店舗のオープンもされ、実際にYUKIZNAの世界観に触れられるユーザーの方がますます増えていき、そしてたくさんのコラボレーションが生まれていくことが楽しみです。

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、780件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年12月末時点)

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